人工知能システムの開発には,機械学習や深層学習などを用いたデータ駆動型のアプローチと,知識処理技術を用いた知識型のアプローチがある.知識型のAI技術においては知識グラフ(ナレッジグラフ)の活用が中核技術の一つに位置づけられ,様々な研究開発が進められている.知識グラフとは,知識のつながりをネットワーク型のグラフ構造で表現したものであるが,その公開や活用のためにはLinked Dataやオントロジーなどの技術が広く利用されている.本稿では,これらの知識グラフを用いたAIシステムの開発に関わる基盤技術を解説する.
弦・梁・膜などの変形する物体の数理モデル,流体力学のバーガーズ方程式,量子力学のシュレーディンガー方程式などに代表される「非線形偏微分方程式」は,自然界の様々な現象を表現可能であることがよく知られている.しかし,非線形性や無限次元性などの性質から解析並びに制御が非常に難しく,現在でも様々なアプローチによる研究が活発に進められている.その中で非線形偏微分方程式の離散構造に着目した「離散力学」並びに「超離散化」というアプローチがあり,いわばシステムの重要な「離散的骨格」を抽出することに対応するといえる.更に,非線形偏微分方程式の離散構造を用いることによって,離散値のみを扱うコンピュータとの親和性の高い制御系設計が期待できる.本稿では,筆者らの研究を中心として,幾つかの基礎並びに応用を含めた関連内容を報告する.
深層ニューラルネットワークは画像分類タスクにおいて成果を上げている一方で,誤ったラベル(ノイジーラベル)に対して脆弱であることが知られている.本稿では,ノイジーラベルが存在する状況下における頑健な学習手法について概説する.まず,本稿が対象とするノイジーラベルの定義とそのパターンについて述べる.その後,ノイジーラベルを含む実世界データセットを紹介し,ノイジーラベルへの頑健性を高めるための手法として注目される半教師あり学習の概要を述べる.最後に,正則化,ラベル補正,サンプル選択に基づくノイジーラベルへの頑健化手法,並びにサンプル選択と半教師あり学習を組み合わせた手法について述べる.
通信ネットワークから端末デバイスに至るまで光技術を活用し,低遅延,大容量通信と高速・高機能情報処理を低消費電力で実現する光情報処理基盤の実現を目指す取組みが2019年頃から行われている.そのような光情報処理基盤で利用される暗号などのセキュリティ機能も光技術での実現が求められており,近年その研究が行われ始めた.本稿では,光演算素子を用いて共通鍵暗号の非線形関数を構成する光暗号回路を紹介する.シリコンフォトニクス技術を利用して作製された光回路チップ及びその動作検証に関して述べ,光技術により暗号回路が具現化できていることを俯瞰する.
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