2014 年 8 巻 2 号 p. 84-95
本稿では,レジリエンスエンジニアリングという新しい方法論の原則と実装の指針を紹介する.レジリエンスは,弾力性,復元力,回復力の優れた状態を指す概念である.レジリエンスエンジニアリングが目標とするのは,社会・技術システムのレジリエント性を大幅に向上させることである.この方法論を構成する鍵は,四つの主要な能力と補完的な要件である.この方法論で探求される安全はSafety-IIと呼ばれ,これまで慣用的に用いられてきた「望ましくないことが起こらないこと」に類する静的な安全Safety-Iとは異なっている.レジリエンスエンジニアリングはSafety-IIの意味での安全性を向上させるための方法論である.レジリエンスエンジニアリングの実装と応用についても,若干の事例を通じて説明を試みた.