Experimental Animals
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高血圧自然発症ラット (SHR) の血圧に関する遺伝的解析
棚瀬 久雄
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1979 年 28 巻 4 号 p. 519-530

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抄録

SHRの血圧の遺伝様式を明らかにするために正常血圧系統としてDonryuを使って遺伝分析を行なった。SHRとDonryuの交雑より得られたF1, F2, 各もどし交配世代の平均血圧は両親の中間値を示した。さらにF2世代の血圧分布は3相性を, 各もどし交配世代のそれらは2相性を示した。そこで各個体を血圧によりSHR型, F1型, Dornyu型に分類し, その表型分離比を求めたところ, F2世代では1: 2: 1, 各もどし交配世代では1: 1であった。またF2世代より高血圧・低血圧の2方向選抜を行なったところ, 選抜第1世代で急激な選抜効果が得られ, その後の選抜反応は徐々に現われ選抜第7世代でそれぞれ両親系統の血圧に等しくなった。次にF1世代より血圧の最とも高い個体をDonryuへ, また最とも低い個体をSHRへ連続もどし交配を行なったところ, 各世代の血圧分布はいずれも2相性を示し, 表型分離比も1: 1であった。また各もどし交配世代の中でF1型の血圧を示す個体の交配によって得られた世代の血圧分布は3相性を示し, 表型分離比もほぼ1: 2: 1であった。以上の結果からSHRの血圧は主遺伝子といくつかの小さな効果をもった変更遺伝子群によって支配されていることが判明した。そこでこの主遺伝子に遺伝記号ht (hypertension) を与えた。またDonryuの遺伝子組成にht遺伝子が導入されたcongenic strainが育成された。

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© 社団法人日本実験動物学会
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