抄録
コラット種14頭, 日本在来種8頭からなる実験用ネコ群に呼吸器症状を主徴とする疾病の発生を見た。羅患例の咽喉頭スワブ, 剖検材料よりネコ腎細胞を用いて7株の細胞変性因子を分離し, うち1株 (KS-1) につきウイルス学的検索を加えた。その結果, 本株はfeline herpesvirus (FHV) と同一のものであり, 本疾患はFHVによるものと考えられた。KS-1株の諸性状は既知のFHVのそれと一致した。さらに, 血清HI抗体価の検索ならびに病歴の検討により, 今回の発生はキャリア状態にあった日本在来種がウイルスの再排泄を起こし, 感受性ネコに伝播したものと推察された。また, 数種の消毒薬のFHVに対する効果をfeline calicivirus (FCV) との比較において検討したところ, FHVに対して次亜塩素酸ナトリウム, ヨード剤, 逆性石鹸およびクロルヘキシジンはともに通常使用濃度で有効であったが, FCVに対しては次亜塩素酸ナトリウムがもっとも有効で, ヨード剤にも効果を認めた。また, 逆性石鹸, クロルヘキシジンはFCVに対し, 通常使用濃度でほとんど効果を認めなかった。