2003 年 6 巻 1 号 p. 89-98
近頃会話分析(CA)の手法が非母語話者を含む非実験的な相互行為の研究に用いられ始めたが,会話分析がはたして第二言語習得及び学習の過程,条件を扱うのに適しているかどうかについては賛否両論がある.本稿では会話分析的手法を用い,第二言語学習が母語話者と非母語話者の日常コミュニケーションの中でいかにして達成されていくかを描写することを試みた.個々のターンを詳細にわたって分析した結果,「学習」と「教授」のシークエンスの構築には会話参与者双方の理解上及び発話上の問題への志向が必要不可欠であることがわかった.また,今回の研究は,会話分析の手法を使った第二言語学習の研究が,従来の第二言語学習の研究結果を経験的かつ的確に立証し,日常コミュニケーションにおける第二言語学習について更に多くのことを発見するのに役立つ可能性があることを示した.