Experimental Animals
Online ISSN : 1881-7122
Print ISSN : 0007-5124
彎曲した触毛と被毛を持つ先天性振戦ラットについて
山田 淳三芹川 忠夫石河 二郎乾 俊秀高田 博川合 是彰岡庭 梓
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1985 年 34 巻 2 号 p. 183-188

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抄録

Kyo: Wistar系ラット中に触毛と被毛の曲がった個体が見つけられた。これらのラットは行動時に振戦を発症し, その表型と行動は雌雄ともにみられ, 雌雄とも不妊であった。1匹以上の振戦仔を産んだペアーから産まれた仔のうち21.8%の雌と21.7%の雄が異常を発現した。この比率は常染色体性劣性遺伝子を想定させる。ヘテロと思われる雄2匹をこのような異常が今まで認められないWAG/Rij系雌2匹と交配させた。F1雌はヘテロと思われるKyo: Wistarへ戻し交配された結果, 約半数のF1雌 (8/21) が1匹以上の異常仔を産んだ。戻し交配で異常が産まれた腹での異常の発症率は26.1% (43/165) であった。このことからこの形質は常染色体性劣性遺伝子によることが強く示唆されたので, 仮にこの遺伝子をtremor (tm) と命名した。病理学的検査の結果, 異常は生殖器及び中枢神経系に認められた。卵巣, 精巣は成体においても形成不全を示した。中枢神経系においては空胞形成が広く認められ, 時にはスポンジ状を呈した。α-methyl-p-tyrosine投与後, 小脳のnorepinephrine濃度は高く, catecholamineの放出に異常があると思われる。現在発症動物の正常同腹仔同志の交配でこの形質を維持している。詳細な病理学的, 内分泌学的, 神経薬理学的, 及び遺伝学的検査が進行中である。

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© 社団法人日本実験動物学会
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