抄録
東京周辺の3つの実験動物供給業者より購入したBALB/c系SPFマウスの盲腸細菌叢を選択および非選択培地を用いて検索し, 直接塗抹標本の定量的観察ならびに相対盲腸重量測定の結果とあわせて比較した。主としてfusiform bacteriaの菌数を反映する直接塗抹標本の観察による総菌数が3つの業者でほとんど等しかったのに対し, 多くの菌群の菌数は業者間で大きく異なり, 総生菌数にも大きな差が認められた。特にEubacterium とラセン型の菌については検出されなかった業者があり, またEnterobacteriaceaeの菌数は業者間のみならず同一業者由来マウス間にも大きな変動が認められた。相対盲腸重量も業者間での差が認められ, 盲腸細菌叢の構成の多様性との相関が示唆された。本研究で示されたような実験動物の細菌学的環境の変動は実験成績に影響を与える可能性があり, 腸内細菌叢の標準化が望まれる。