抄録
ALS系およびALR系は, ともにアロキサン誘発糖尿病モデルマウスとして開発された系統であるが, 糖尿病は自然に発症しない。
両系統に糖尿病を自然発症させ, 糖尿病態の差異を比較検討する目的で, 肥満遺伝子 (Ay) を導入してALS-Ay系およびALR-Ay系を作出したところ, 特にALS-Ay系の雄に重症の糖尿病態が自然に発症した。そこでALS-Ay系およびALR-Ay系について体重, 摂餌量, 摂水量, 尿糖, 尿中ケトン体, 血糖値の測定および糖負荷試験を行った。その結果, ALS-Ay系マウスの雄はALS系に比べて肥満を呈することなく, 24週令での糖負荷時の耐糖能は極端に低下し, インスリンの分泌は, 5.0μU/ml以下となり, 分泌反応もほとんど認られなかった。一方, 雌は肥満を呈し, 糖負荷時の耐糖能は, あまり低下せず, インスリンの分泌量は多く, 分泌反応も強く認められた。ALR-Ay系は雌雄とも肥満を呈し, ALS-Ay系とほぼ同様の病態を示したが, その程度はALS-Ay系に比べて弱い傾向を示した。特にALS-Ay系マウスは糖尿病態から, 今までにみられないタイプの糖尿病モデルマウスになりうる可能性が示唆された。