抄録
メスニホンザルの非交尾期にみられる性腺機能の低下の要因について検討するため, 19頭を用いてLH-RH, PMSG投与実験を行った。7頭にPMSGを12~14日間連日投与したところ, 卵胞の成熟とそれに伴うE2値の増加がみられたが, LH値は2頭で全く増加がみられず, 他の5頭でもその増加は極めてわずかであった。また, 投与10日目以降は, 卵胞も退縮し排卵は見られなかった。これは, 発育した卵胞から分泌されたE2のポジティブ・フィードバックによっても, 下垂体から十分量のLHが分泌されず, 排卵に至らなかったことを示している。また5頭にLH-RHを単独1回投与した時, 交尾期ではLH値に明らかな増加がみられたが, 非交尾期では5倍量の投与量にも拘らずLH値の増加はみられず, 非交尾期の下垂体は高度な機能低下にあることを示していた。さらに, 7頭にPMSGを連日投与後, LH-RHを投与することにより, 全頭でLHのサージ様の増加がみられ, 内4頭で排卵がみられた。これらの成績から, 非交尾期のメスニホンザルの性腺機能の低下の理由の一つとして, 視床下部のLH-RH分泌機能を含む上位中枢の機能低下が示唆された。