抄録
糖尿病 (Diabetes Mellitus, DM) 状態において急性胃粘膜病変 (Acute Gastric Mucosal Lesion, AGML) が発生し易い機序を明らかにするため, Streptozotocin (STZ) で誘発したDMラットの胃体部粘膜を病理組織学的に検索した。粘膜全層の長さおよび被蓋上皮細胞 (Surface Epithelial Cell, SEC) 層の厚さを求めるとともにPCNA (Proliferating Cell Nuclear Antigen) 陽性細胞数を計数した。その結果, 対照ラットと比較してDMラットの粘膜全長は若干伸長する傾向にあったが, SEC層/粘膜全層の比およびPCNA陽性細胞数は有意に減少していた。したがって, SEC層から成る粘膜バリアの減弱がDMにおけるAGMLの易発性に密接に関与している可能性が考えられる。