福岡県農林業総合試験場研究報告
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炭素率の高い植物性有機物の施用が土壌の無機態窒素の動態と 植物の生育に及ぼす影響
満田 幸恵 持永 亮竹下 美保子川下 功雅牟田 博喜
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キーワード: 窒素, もみ殻, , 炭素率, わら
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2023 年 9 巻 p. 22-26

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抄録
有機物は土壌に施用されることで土壌の物理性,化学性および生物性が改善され,作物の収量や品質の向上が期待される。本研究では,植物性有機物を堆肥化せずに直接農地に施用する場合の指導に資するため,稲わら,麦わら,もみ殻,竹を供試し,土壌中の無機態窒素の動態を明らかにした。さらに,これら有機物の施用が植物に及ぼす影響をコマツナを用いて検証した。有機物を土壌に混和し30℃条件で 4週間培養した場合の窒素無機化量は,いずれも負の値を示した。減少が最も顕著であったのは麦わらを用いた場合で,次いで稲わら,竹,もみ殻の順であった。各有機物を土壌に 1kg/m2施用しコマツナの栽培試験を行った結果,麦わらを施用した場合には,施用しない場合に比べ葉色は淡く窒素吸収量は少なかった。これは,土壌中の有機物の分解に伴い土壌中の無機態窒素量が減少したことによるものと推察された。コマツナのように栽培期間が30~40日程度の作物栽培にわらや竹を1kg/m2施用する場合には,窒素の増肥が必要であり,その量は稲わらで 2g/m2,麦わらで 4g/m2,竹で 3g/m2程度と推定された。栽培期間の短い作物にもみ殻を施用する場合には,増肥の必要性は小さいことが示唆された。
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© 2023 福岡県農林業総合試験場
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