ファルマシア
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光と分子状酸素を利用する酸化反応
多田 教浩伊藤 彰近
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2014 年 50 巻 6 号 p. 517-521

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抄録

光と空気は我々人類を含む生命体の生存に不可欠な4要素(光,空気,水,土)のうちの2要素である.例えば植物は太陽光と二酸化炭素を用いる光合成により,光エネルギーを炭化水素と酸素に変換している.一方で動物は,酸素で炭化水素を燃焼させることで生命活動を維持し,二酸化炭素と水を排出している.このように光と空気が広く生命体の生存に寄与できるのは,これらが地球上に豊富に存在しているためであり,持続可能な生産活動の実現にはこの豊富な資源を有効活用することが望ましい.
一方,我々が日常生活において恩恵を受けている化学製品の製造プロセスにおいては,高度に還元された炭化水素(石油)を原料として用いているため,酸化反応が極めて重要な役割を担っている.しかしながら酸化反応においては,反応が進行すれば必然的に等量の酸化剤が還元される.したがって,その還元体が副生成物として排出され,しばしば問題となる.このような背景から,酸化反応を持続可能で経済的な化学技術とするには,我々の周りに豊富に存在し,副生成物が理論的に水のみとなる分子状酸素を酸化剤とすることが望ましい.我々は,分子状酸素と,身の回りに常に存在するエネルギーである光を組み合わせることで,理想の酸化反応を開発すべく研究を行っている.
本稿では,当研究室のこれまでの光酸素酸化反応に関する取り組みについて紹介する.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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