ファルマシア
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セミナー:創薬科学賞
逆転の発想から生まれた,SGLT2阻害薬カナグリフロジン
野村 純宏
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2014 年 50 巻 6 号 p. 538-542

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抄録

人類は進化の過程で長い飢餓時代を経て,血糖を高めるすべを多く備えたと考えられる.グルカゴン,アドレナリン,コルチゾールなどのホルモンはその象徴であり,後述するナトリウム―グルコース共輸送体(sodium glucose co-transporter:SGLT)もその1つである.しかし,ここ50年における食生活の変化,飽食と車社会化の影響でカロリー過多となり,2型糖尿病患者が増加してきた.唯一,血糖を下げるホルモンがインスリンであり糖尿病治療に活用されているが,グルコースを組織に取り込むため体重増加を生じやすい.2型糖尿病においては高血糖状態が続くことでインスリン抵抗性,インスリン分泌不全が増悪し,更に血糖値を高めてしまう.グルコースのアルデヒドはタンパク質のアミノ基と反応し,変性タンパクを生成する.この変性タンパクの沈着が微小血管障害を引き起こすことが糖尿病合併症の一因となっている.
このように,本来重要な栄養素の1つであるグルコースが過剰になると毒物として作用してしまう.これが糖毒性の概念である.既存の経口血糖降下薬は,インスリン抵抗性改善薬あるいはインスリン分泌促進薬がそのほとんどである.これらの薬剤はインスリンに依存したメカニズムを有することから,上記の体重増加をはじめ,膵β細胞の疲弊,低血糖などが見られる.

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© 2014 The Pharmaceutical Society of Japan
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