2014 年 50 巻 6 号 p. 533-537
近年,我が国において40歳以上の男女の8人に1人が,「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり,我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの悩みを抱えている,という報告がある.これらのうち,尿意切迫感を主症状とし,頻尿や切迫性尿失禁を伴い,日常生活や社会的活動に様々な支障をきたす場合,過活動膀胱と診断されることがある.過活動膀胱には,脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルで起こる「神経因性」のものと,それ以外の原因で起こる「非神経因性」のものが知られている.
従来,過活動膀胱の治療薬として,ムスカリン受容体拮抗薬が使用されてきた.しかし,主作用であるムスカリン受容体拮抗作用に基づき膀胱収縮力を抑制するため,尿閉・排尿困難のリスクがある.加えて,唾液分泌や腸管吸収もムスカリン受容体を介して調節されることから,口内乾燥・便秘といった副作用が生じやすく,服薬コンプライアンスの低下が問題となっている.
一方,近年,ヒト膀胱におけるβ3アドレナリン受容体の役割に関する研究が進んだ結果,β3アドレナリン受容体作動薬の過活動膀胱治療薬としての可能性が注目を集めてくるようになった.