ファルマシア
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続・数式なしの統計のお話
第3回 統計で真贋判定?
計量文献学
酒井 弘憲
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2015 年 51 巻 10 号 p. 978-979

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抄録

今年もまた,秋の風が感じられる季節がやってきた.冬生まれの筆者は夏の暑さが何よりも苦手であり,暑さから逃れられる秋から冬にかけては大好きな季節でもある.しかし,あの暑苦しい夏が大好きという方も大勢いらっしゃるようで,夏をテーマにした音楽や,夏を取り上げた文学の名作も数多い.我が国では,清少納言の枕草子に有名な「夏は夜.月のころはさらなり.やみもなほ,蛍の多く飛びちがひたる.また,ただ一つ二つなど,ほのかにうち光りて行くもをかし.雨など降るもをかし.」のくだりがあるし,英国では,もちろんウィリアム・シェークスピアのそのものずばり「真夏の夜の夢」がある.全5幕からなり,アテネ近郊の森に足を踏み入れた貴族や職人,森に住む妖精たちが登場する.人間の男女は結婚に関する問題を抱えており,妖精の王と女王は養子を巡りけんかをしている.しかし,妖精の王の画策や妖精の一人であるパックの活躍によって最終的には円満な結末を迎えるというよく知られた戯曲である.
実在について賛否の議論もあるシェークスピアだが,写楽と同じように,別人説もかまびすしい.有名なところでは,フランシス・ベーコン同一人説などがある.数百年前の人物についてそんなことを調べるなど至難の業であると思っていると,その人の書いた文章の書き癖から統計学を使って同一人であるかどうかを調べてみようという興味深い研究手法があるのだ.これを「計量文献学」と呼ぶ.

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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