ファルマシア
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51 巻 , 10 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
目次
オピニオン
  • 小林 資正
    2015 年 51 巻 10 号 p. 917
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    日本薬学会第135年会は,2015年3月25日(水)~28日(土)までの4日間,神戸市にて開催された.本年会開催に向けて,大阪大学大学院薬学研究科の先生方を中心に神戸学院大学薬学部と兵庫医療大学薬学部の先生方に加わっていただき組織委員会を立ち上げ,3年前から準備を開始した.講演会場とさせていただいた神戸学院大学と兵庫医療大学からはいろいろとご協力を得ることができ,なんとか無事に年会を開催することができた.
    本年会では,神戸学院大学と兵庫医療大学の両大学の全24の講演会場において,特別講演,受賞講演,理事会企画シンポジウム,一般シンポジウムや一般口頭発表を実施し,神戸サンボーホールとデザイン・クリエイティブセンター神戸の両ホールでポスター発表および機器展示を実施した.また,両エリアは互いに少し離れているので,両エリア間を結ぶシャトルバスを運行した.
    本年度の一般ポスター発表は2,529題あり,26日生物系,27日化学・物理系,28日医療・教育系の日程で大きく3領域に分けて実施した.一方,講演会場では合計75件におよぶ一般シンポジウムが企画されたほか,全1,130題の一般口頭発表はポスター発表と重ならない日に配置した.また一般シンポジウムはそれぞれ2時間半の枠をとり,創薬から医療にわたるいろいろな領域からの最新の情報に直接触れる充実したプログラムを提供させていただいた.
    本年会は,7,551名の一般・学生会員および非会員の有料参加者と約760名の学部学生のほか非会員シンポジストなどの招待者を合わせると,およそ8,400名の登録がある盛大な年会となった.一方で,3日間実施した計19件のランチョンセミナーで配られた整理券の合計約5,600枚と,両大学の食堂で消費された3日間の総昼食数1,600食を合計すると,7,200食となった.参加者の皆様がポスター会場におられた日を除いて2日間講演会場におられたとすると,延べ16,800食の昼食が必要となって両者の数値に大きな開きがあることから,3日間フルに学会参加された方は意外にもかなり少なくなってきているように推測される.このことは,日本薬学会年会が薬学領域で開催される研究者および学生の皆様にとっての年に一度の大きなイベント(お祭り)のような機能へと変わってきていることを示しているのかもしれない.
    その一方で,今年度から実施された理事会企画の国際交流シンポジウムに象徴されるように,日本薬学会年会の国際化を目指すのであれば,諸外国からの研究者がもっと参加しやすくなるように年会ホームページや参加申込システムの英語版を構築して年会情報の海外への開示を推進していく必要があるかと考えられる.また現在,一般口頭発表やポスター発表を申し込むには日本薬学会会員であることが求められるが,海外からの参加者にはこれを免除する必要があるようにも考えられる.今後,これまでの日本薬学会年会が果たしてきた機能に加えて,諸外国からの参加者を迎えて世界の創薬研究者の情報交換の場として機能する,国際的な学術交流のためのセッションの構築についても推進していただければと考える次第である.
Editor's Eye
薬学がくれた私の道
挑戦者からのメッセージ
  • 鈴木 勉
    2015 年 51 巻 10 号 p. 931-933
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    1986年に世界保健機関(WHO)方式がん疼痛治療法(Cancer Pain Relief)が発表され,医療用麻薬をがん疼痛治療に積極的に使用する方法が世界に普及した.その結果,多くのがん患者ががんの痛みから解放される時代になってきた.我が国においても,3年遅れて1989年に徐放性モルヒネ製剤が発売されてから,ようやく本法が導入された.しかし,我が国の国民はアヘン戦争や覚せい剤乱用などの歴史から麻薬恐怖症(opioid phobia)が根強く植え付けられており,さらに武士道などから痛みに耐える文化も強く根付いているからか,がん患者やその家族が医療用麻薬に対する誤解や偏見を持ち,がんの痛みを取る治療法があるにも関わらず,医療用麻薬による積極的ながん疼痛治療が十分には行われていないのが現状である.我々は,これらの障壁となっている医療用麻薬に対する誤解を解くための根拠を基礎研究で明らかにしたので,以下に紹介する.
研究室から
  • 渡部 一宏
    2015 年 51 巻 10 号 p. 934-936
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ある週末の金曜日18時半,聖路加国際病院薬剤部製剤室の薬剤師である私は仕事も終わり,築地の立ち飲み屋で一杯引っ掛けてから帰ろうと思いながら,製剤業務の後片付けをしていた.そのとき,1本の電話が鳴った.

    渡部:はい,薬剤部製剤室担当渡部です.
    中村医師:あっ,渡部くん.中村です.業務時間外で悪いのだけど,先ほど入院してきた新患の乳がんの方,すごい大きな皮膚潰瘍で臭いがかなりすごいよ.いつものメトロニダゾールゲル500gをこれから創って欲しいんだけど,大丈夫?
    渡部:はい,もちろんです.これから製剤を調製して,病棟に持っていきますね.

    このようなことが,幾度あっただろうか.中村医師とは,その当時聖路加国際病院ブレストセンター長で現在,昭和大学医学部乳腺外科教授(日本乳癌学会理事長)である我が国を代表とする乳腺外科スーパードクターの中村清吾先生である.聖路加国際病院は,キリスト教精神の下に全人的ケアの実現をポリシーに掲げ,かつ日野原重明名誉院長の明確なビジョンと燃えるようなパッション,そして常に青年を思わせる行動力のもと「チーム医療の実現」を目指してきた病院で,中でも中村先生がリーダーシップをとられたブレストセンターは,多職種によるチーム医療活動が院内でも特に盛んであった.
    著者は,聖路加国際病院に入職してまもなく,乳がん診療とそのチーム医療活動に感銘と興味を持ち,また患者さんから慕われる中村先生の臨床医の姿に敬服し,当初からこのチームに薬剤師として関わらせていただいた.チームに関わり始めて私は初めて,がん性皮膚潰瘍に苦しむ乳がん患者さんを目の当たりにした.患部は,目を伏せたくなるような耐え難い症状で,また患部からの酷い臭いが外来診察室や病棟全体に広がり,その辛さは言葉では言い表せないものである(図1).「がん性皮膚潰瘍臭に苦しむ乳がん患者さんの悩みを何とかしたい」これこそが,がん性皮膚潰瘍臭のケアに立ち向かう,一人の薬剤師のリサーチクエスチョンの原点であった.
セミナー
  • 五十嵐 中
    2015 年 51 巻 10 号 p. 937-941
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「日本の医療費(国民医療費)は,平成24年実績で年間39兆円です」…数字が大きすぎて,あまり実感が湧かない.
    「1人当たりにすると,年間30.8万円です」…今度は小さすぎて,やはり実感が湧かない.
    「この教室,だいたい150人いますね.1部屋で,年間4,000万から5,000万円ですね.」このあたりの金額を出すと,ようやく「手頃」にイメージできるようになる.年々医療費が増大していくなか,臨床系の学会でも,「〇〇の医療経済」「××の費用対効果」のタイトルを時折目にするようになった.マイナーな分野に陽が当たるようになったのは嬉しいことである.ただ残念なことに,まだまだ誤解されることも多い.
    このコラムでは,薬剤経済評価・費用対効果評価について,「そもそも何なのか」「どうやって評価するのか」「評価結果をどう使うのか」に分けて紹介していきたい.
最前線
  • 白岩 健
    2015 年 51 巻 10 号 p. 942-946
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「費用対効果」を医療の世界でも検討する必要があるということは,多くの人が合意するところであろう.医療の技術進歩や高齢化で医療費が増加する一方で,日本の財政状況はあまりよくない.使用できる医療資源の制約が明らかな中で,それらを効率的に使用すべきという考え方は,ある意味で受け入れやすいものである.しかし,費用対効果をどのように算出するのか,あるいはその結果を政策的にどのように用いるのかとなると,「費用対効果は重要である」という一般論では語ることのできない難しさがある.特に後者については,様々な利害関係者が存在する中で,立場の違いも生じる.
    このような状況の中で,まずは日本において費用対効果の制度化に向けた動きがどのように進んでいるのかを振り返ってみよう.その後に,費用対効果を実際にどのように算出するのか,抗がん剤などを例に考えてみたい.
セミナー
  • 小山 隆太
    2015 年 51 巻 10 号 p. 947-951
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「抗てんかん薬の作用メカニズムなど分からずともよい.発作が治まればそれでよい」という考えが根強く流布する.主張の意図はくみ取れるが,私はこの意見に強い疑問を抱く.開き直りともとれるこのような姿勢の下,限られた種類の動物モデルのみを利用して薬物スクリーニングを続け,効果が大差ない新薬を創り続けても,約20~30%の患者の発作が完全にはコントロールできないという現状は打破できない.これまでの抗てんかん薬の創薬において,初めにメカニズム解明ありき,という論理的なプロセスを踏む開発姿勢は軽視され続けてきた.結果的に,てんかんの分子細胞生物学には未解明な点が多い.真にてんかんという病気を理解し,これを克服するためには,てんかん発症のメカニズムを分子細胞生物学的な観点から詳細に解明すべきだ.これにより,てんかんの発症そのものを予防する「抗てんかん原性薬」の創薬への道が開けるだろう.
セミナー
話題
  • 諸岡 良彦, 平井 憲次
    2015 年 51 巻 10 号 p. 957-962
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    精神疾患のうち,統合失調症と双極性障害(含うつ病)は,脳の機質と機能障害に基づく病気である.対象が脳という複雑な組織と機能を持つシステムである上,物的証拠が得にくく,病理の解明が神経変性疾患(アルツハイマー病など)と比較して著しく立遅れている.診断も病名の決定すらも全て病態と問診に依存しており,医師の主観が入りやすい.
    1952年に,それまで治療に有効な薬物のなかった統合失調症の症状,特に陽性症状の緩和に劇的な効果があるとして登場したのが抗精神病薬である.クロルプロマジンの発見を契機として次々と開発された薬物は,当時治療の中心であった電気ショック療法や被術患者を廃人にするロボトミーに替わって,薬物療法中心の時代をもたらした.薬理も臨床主体の手探りで研究され,ドパミンD2受容体伝達遮断が関与することが明らかにされた.薬理から遡って病理の仮説が生まれた.ドパミン伝達を遮断すれば症状が緩和されることから,患者は脳内で,何らかの理由でドパミンの放出が過剰なのだろうとする「ドパミン過剰仮説」である.この説は一時,決定的と思われたが,その後,単純なドパミンの過剰では説明できない事実が次々と見いだされ,病理は再び混迷に陥っている.
    クロルプロマジンの発見から1980年代の末頃までに,ドパミン伝達の遮断を第一目的に開発された薬は数十種に及び,これらは定型抗精神病薬,あるいは第一世代の抗精神病薬と言われている.定型抗精神病薬の発見は画期的ではあったが,次々と開発された定型抗精神病薬は共通して大きな欠陥を伴っていた.第一は副作用が多岐にわたって多いことである.第二は定型では陽性症状は緩和されるが,陰性症状,いわゆる無気力,意欲減退の症状の改善には効果が薄いことである.薬の過剰投与や重複投与が過鎮静と呼ばれる逆効果を生み,問題となったこともある.この問題の解決のため,定型のうち比較的過鎮静を起こしにくいクロザピンを手がかりに,定型薬の改良が進み,非定型抗精神病薬が生まれた.定型薬がドパミン伝達を一方的に阻害するのに対し,非定型薬アリピプラゾールは受容体への強い結合でドパミンの受容体への接近を妨げることに加え,自身が微弱ながらドパミンと同じ刺激を後シナプスに伝える能力を持ち,部分作動薬として作用する.
    神経伝達に関わる受容体へのリガンドの作用は,化学物質同士の相互作用である.その原点に帰って,化学の視点でドパミン伝達や抗精神病薬の作用をもう一度見直そうというのが,ここで紹介する筆者らの主張である.
話題
  • これからの薬局と薬剤師のあり方とは?
    鈴木 信行
    2015 年 51 巻 10 号 p. 963-965
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「自宅に余っている薬がありますが,どうすればいいでしょうか?」
    残薬があるのは患者たちの間ではごく当たり前の事実.しかし,このように薬剤師に正直に言いだす患者はほとんどいない.それはどうしてだろうか?
    さて,私は先天性の身体障がい者であり,がんの罹患を経験した患者である.さらに,患者の立場から,患者と医療者が協働できるイベントや研修会を企画運営する会社の経営者でもある.今回は,この両者の視点から,これからの薬局や薬剤師のあり方について考えていく.
話題
わだい
FYI(用語解説)
  • 白岩 健
    2015 年 51 巻 10 号 p. 970_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ATC(Anatomical Therapeutic Chemical:解剖治療化学)分類は,オスロにあるWHO医薬品統計法共同研究センターが作成しており,各医薬品には5つのレベルから構成されるコードが付与される.
    例えば糖尿病治療薬メトホルミンのコードはA10BA02であり,第1レベル(解剖学的グループ):A[消化管および代謝],第2レベル(治療法サブグループ):A10[糖尿病治療薬],第3レベル(薬理サブグループ):A10B[インスリンを除く血糖降下薬],第4レベル(化学サブグループ):A10BA[ビグアナイド],第5レベル(化学物質):A10BA02[メトホルミン]を表す.
    一方で,IMS HealthなどではEphMRAの作成したATC分類を使用している.両者はハーモナイゼーションが進められているものの,必ずしも同一ではないため注意が必要である.
  • 植沢 芳広
    2015 年 51 巻 10 号 p. 970_2
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ROCはReceiver Operating Characteristicの略語であり,受信者動作特性と和訳される.飛行機のレーダーに生じるノイズと敵機を示すシグナルの識別率を評価するために,戦時中に考案された.現在では医療における診断精度の指標としても一般化しており,受診者動作特性と記されることも多い.例えば,悪性腫瘍マーカーの評価の閾値を変化させると,それに応じて悪性腫瘍の罹患に対する陽性率(感度)および偽陽性率(1-特異度)が変化する.これらをプロットしたものがROC曲線であり,その曲線下面積が大きいほど良い識別マーカーであることを示す.理想的なマーカーのROC曲線下面積は100%となる.
  • 植沢 芳広
    2015 年 51 巻 10 号 p. 970_3
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    人工ニューラルネットワークの一種である.パターン認識で用いられてきた従来のニューラルネットワークは,入力層,中間層,出力層の3層程度から成る構成であった.近年登場したディープラーニングは,中間層を重層化することによって学習を繰り返す結果,画像や音声認識の分野において極めて高い精度を達成できることが分かり話題となっている.創薬分野においても,2012年にMerck社が行ったMerck Molecular Activity Challengeにおいてディープラーニングが最高精度を示したことで注目された.欠点として,高度な計算環境を要求すること,および開発や調整が困難であることが挙げられる.
  • 植沢 芳広
    2015 年 51 巻 10 号 p. 970_4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ランダムフォレストはLeo Breimanによって2001年に開発された機械学習法である.ニューラルネットワークやサポートベクターマシンと比較して,使用された特徴量のモデルに対する寄与度を評価可能である等の利点を有する.本法では教師付きデータをブートストラップサンプリング(復元抽出)することにより多数のサブセットを発生し,サブセットごとに多様な決定木を構築する.各決定木の予測値は異なるため,識別問題には多数決を,回帰問題には平均値を用いることにより最終予測値を得る.ランダムフォレストの様に予測性能の低い機械学習を多数組み合わせる手法は集団学習と呼ばれ,高度な予測の達成に有利であることが知られている.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2015 年 51 巻 10 号 p. 971
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    このコラムでは厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    当コラムは,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成27年7月3日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ→「医薬品関連情報」→「承認情報(医薬品・医薬部外品)」→「医療用医薬品の承認審査情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html)より検索できます.
薬学教育維新
  • ファルマシア委員会
    2015 年 51 巻 10 号 p. 972-973
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    学会のアクティビティのバロメータの1つとして参加者数や演題発表数が挙げられる.6年生薬学教育の導入,製薬企業の変革,そして医療政策の転換など,学会活動をとりまく環境は大きく変化している.本コラムでは,最近6年間の日本薬学会年会(第130~135年会)組織委員会のデータを基にファルマシア委員会が一般発表者と学生発表者に区分して演題発表数を集計した.前回年会に比べて,第135年会は総演題数が増加した.同様の結果は,横浜(第133年会)開催でもみられたが,アクセスの利便性や旅費負担の低下が理由の1つとして考えられる.内訳をみると,学生会員による発表演題数が前回大会より増加したが,一般会員の演題数は減少しており,漸減傾向であることに変わりはない.
在宅医療推進における薬剤師のかかわり
  • 旭中央病院での実践を通して
    青木 勉
    2015 年 51 巻 10 号 p. 975-977
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    日本は,今も約20万人の方が精神科病院に1年以上の長期入院をしており,世界の精神科病床の約19%に当たる約35万の精神科病床を有している.他の先進国では地域移行が進み,精神障害者が地域で生活できるように様々な精神科サービスが整備されているが,我が国は,まだ病院サービスが中心で地域サービスは著しく不足し,世界の精神保健医療の水準から大幅に遅れている.そして我が国でも,重篤な精神疾患を患っていても「その人らしく地域で生活する」ことを可能にする精神科サービスが切望されており,精神疾患患者の退院支援と地域定着支援の連携システムの構築が喫緊の課題である.当科は,2002年より精神科サービスのリフォームを開始し,精神疾患患者の退院支援と地域定着支援を行ってきたので,薬剤師の関わりを含めて紹介する.
続・数式なしの統計のお話
  • 計量文献学
    酒井 弘憲
    2015 年 51 巻 10 号 p. 978-979
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    今年もまた,秋の風が感じられる季節がやってきた.冬生まれの筆者は夏の暑さが何よりも苦手であり,暑さから逃れられる秋から冬にかけては大好きな季節でもある.しかし,あの暑苦しい夏が大好きという方も大勢いらっしゃるようで,夏をテーマにした音楽や,夏を取り上げた文学の名作も数多い.我が国では,清少納言の枕草子に有名な「夏は夜.月のころはさらなり.やみもなほ,蛍の多く飛びちがひたる.また,ただ一つ二つなど,ほのかにうち光りて行くもをかし.雨など降るもをかし.」のくだりがあるし,英国では,もちろんウィリアム・シェークスピアのそのものずばり「真夏の夜の夢」がある.全5幕からなり,アテネ近郊の森に足を踏み入れた貴族や職人,森に住む妖精たちが登場する.人間の男女は結婚に関する問題を抱えており,妖精の王と女王は養子を巡りけんかをしている.しかし,妖精の王の画策や妖精の一人であるパックの活躍によって最終的には円満な結末を迎えるというよく知られた戯曲である.
    実在について賛否の議論もあるシェークスピアだが,写楽と同じように,別人説もかまびすしい.有名なところでは,フランシス・ベーコン同一人説などがある.数百年前の人物についてそんなことを調べるなど至難の業であると思っていると,その人の書いた文章の書き癖から統計学を使って同一人であるかどうかを調べてみようという興味深い研究手法があるのだ.これを「計量文献学」と呼ぶ.
製剤化のサイエンス
薬学実践英語
トピックス
  • 齊藤 基道
    2015 年 51 巻 10 号 p. 986
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    超原子価化合物はオクテット則を超えて10個以上の電子を収容した状態の元素を有し,第3周期以降の典型元素によく見られる.その中でもリンは,比較的容易に超原子価状態を形成する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Werner T., Adv. Synth. Catal., 351, 1469-1481 (2009).
    2) Caputo C. B. et al., Science, 341, 1374-1377 (2013).
    3) Holthausen M. H. et al., Chem. Sci., 6, 2016-2021 (2015).
    4) Hudnall T. W. et al., J. Am. Chem. Soc., 130, 10890-10891 (2008).
  • 松村 実生
    2015 年 51 巻 10 号 p. 987
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    生物活性化合物のスクリーニングを行う際に,標的タンパク質への結合のみでなくその作用も迅速かつ簡便に評価することは,医薬候補化合物の探索において強力なツールとなる.今回,Mayer- Wrangowskiらはエストロゲン受容体(ER)βに着目し,化合物により引き起こされる構造変化を直接検出することにより,アゴニストとアンタゴニストの識別が可能な結合アッセイ法を開発したので,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mayer-Wrangowski S. C., Rauh D., Angew. Chem. Int. Ed., 54, 4379-4382 (2015).
    2) Schulman I. G., Heyman R. A., Chem. Biol., 11, 639-646 (2004).
  • 下津 祐樹
    2015 年 51 巻 10 号 p. 988
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    今日,緑茶ポリフェノールとして知られるカテキン類が強い抗酸化活性を有し,日々の健康に役立つことは広く一般に認識されるようになった.カテキン類が抗酸化活性を示すメカニズムとしては,B環の水酸基が隣り合ったカテコール構造もしくはピロガロール構造中の水酸基の水素を与えてラジカルを消去する機構が提唱されており,反応の結果生じるフェノキシラジカルは,電子の非局在化や隣接する水酸基との水素結合によって安定化される.このメカニズムは,電子スピン共鳴(electron paramagnetic resonance:EPR)による定常状態のB環由来フェノキシラジカルの検出や,カテキン類の酸化によって生成する反応物の構造解析から支持されており,B環が抗酸化活性に中心的な役割を果たすことは間違いないと考えられている.一方,超短時間(ナノ秒単位)での反応を観察することが可能なパルスラジオリシス法を用いた過去の検討において,A環由来フェノキシラジカルの存在が紫外可視吸収スペクトルから想定されていたが,その直接的な証拠はいまだ得られていなかった.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Quideau S. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 50, 586-621 (2011).
    2) Severino J. F. et al., Free Radical Biol. Med., 46, 1076-1088 (2009).
    3) Neshchadin D. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 13288-13292 (2014).
  • 川口 研
    2015 年 51 巻 10 号 p. 989
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    分析化学の究極的な目標の1つとして,極めて少ない試料(例えば,血液一滴)から様々な物質の情報を得ることが挙げられる.近年,質量分析計などの検出器の性能アップに伴い,高感度な測定が達成されつつあるが,測定試料から微量な化学物質を検出するためには,試料から目的物質を抽出・濃縮・精製するための試料前処理操作が必要になる.これまでに液―液抽出法,溶媒抽出法,固相抽出法(solid phase extraction:SPE),固相マイクロ抽出法(solid phase micro extraction:SPME)など様々な試料前処理法が開発されている.一方で,試料前処理法の中には,煩雑な操作により時間がかかり,実験者の手技による再現性が低下するなどの問題点もあった.したがって,これらを克服するためには機械による自動化が求められ,実際にSPEおよびSPMEの完全自動化が実現している.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Anastassiades M. et al., J. AOAC Int., 86, 412-431 (2003).
    2) Kaewsuya P. et al., J. Agric. Food Chem., 61, 2299-2314 (2013).
    3) Tang S. et al., Anal. Chem., 86, 11070-11076 (2014).
  • 宮嶋 ちはる
    2015 年 51 巻 10 号 p. 990
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ビグアナイド薬であるメトホルミンは,糖新生の抑制や,インスリン抵抗性の改善効果により2型糖尿病薬剤として汎用されている.また,近年メトホルミンの持つAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化作用ががん治療に効果があるとして注目を集めている.AMPKは細胞内AMPの増加により活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり,ATPの産生に寄与する.AMPKの活性化はアセチルCoAカルボキシラーゼやHMG-CoA還元酵素,mammalian target of rapamycin(mTOR)の活性を阻害することで,脂肪酸,コレステロールおよびタンパク質の合成を阻害する.また,AMPKは細胞質成分の分解を誘導するオートファジーを促進することで,エネルギーの恒常性を保つセンサーとして働く.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wingo S. N. et al., PLoS ONE, 4, e5137 (2009).
    2) Pineda C. T. et al., Cell, 160, 715-728 (2015).
    3) Doyle J. M. et al., Mol. Cell, 39, 963-974 (2010).
  • 吉澤 一巳
    2015 年 51 巻 10 号 p. 991
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「身体に悪いことは分かっている・・・でもやめられない」のがタバコである.一昔前には,タバコ型の禁煙グッズがテレビコマーシャルで話題となったが,これは口淋しさを紛らわすことで禁煙しようというものであった.この禁煙グッズによる禁煙成功率は不明だが,最近では「禁煙治療=ニコチン依存症治療」という考え方が定着しつつある.2006年4月には,禁煙治療に健康保険が適応になったこともあり「月々2万円程度の治療費で禁煙できます」というテレビコマーシャルをよく目にするようになった.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Igari M. et al., Neuropsychopharmacology, 39, 455-465 (2014).
    2) Walker N. et al., N. Engl. J. Med., 371, 2353-2362 (2014).
    3) Aubin H. J. et al., Thorax, 63, 717-724 (2008).
    4) Prochaska J. J. et al., BMJ, 347, f5198 (2013).
  • 栗田 尚佳
    2015 年 51 巻 10 号 p. 992
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    これまでに,母体の低栄養などによる胎生期の環境が,子における将来の生活習慣病などの疾患発症のリスクに成り得るという,Barker仮説を発端とするDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)説が注目されている.DOHaD説において,これらの影響はDNAメチル化などのエピジェネティクスな変化を介して,世代を超えて引き継がれる可能性が示唆されている.DNAメチル化は,転写因子などがDNAに結合するのを妨げ,遺伝子発現抑制に働く.このような胎生期の環境による影響とは別に,母親の普段の生活スタイルの影響(肥満など)も,その子の糖・エネルギー代謝異常に影響を与える可能性が,実験動物,ヒトでの疫学の両面において報告されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Gillman M. W. et al., Pediatr Res., 61, 625-629 (2007).
    2) Dunn G. A., Bale T. L., Endocrinology, 150, 4999-5009 (2009).
    3) Boney C. M. et al., Pediatrics, 115, e290-e296 (2005).
    4) Wei Y. et al., J. Biol. Chem., 290, 4604-4619 (2015).
  • 河村 銀河
    2015 年 51 巻 10 号 p. 993
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    日常臨床において,治療効果の向上のために複数の薬剤を併用することがある.例えば,β-ラクタム系の抗菌薬の殺菌作用を強めるために,β-ラクタマーゼ阻害薬が配合される.西洋薬における薬剤の併用は科学的根拠に基づくものであり,その目的が明確である.東洋薬(特に漢方薬)でも,患者の症状に合わせて様々な薬効成分を含む生薬を複数組み合わせた治療が行われる.しかし,ここで用いられる組合せは漢方医の経験によって構築されたものが多く,必ずしも科学的な知見を基に得られたものではない.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ikarashi N. et al., J. Ethnopharmacol., 139, 409-413 (2012).
    2) Mei F. et al., Chin. J. Integr. Med. online 16 Nov 2014, doi : 10. 1007/s11655-014-1952-x.
    3) Yuan D. et al., Biol. Pharm. Bull., 25, 872-874 (2002).
    4) Okamura N. et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 20, 363-372 (1999).
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  • 平倉 穣
    2015 年 51 巻 10 号 p. 923_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    最も熱心に聞き,印象に強く残っていると共に影響を受けた講義といえば,薬学部3年か4年の頃に聴講した清水博先生の「物理化学IV」だ.この頃は,講義はそっちのけで流行りの現代思想などを読みあさったりしていたが,この講義だけは欠かさずに出席した.毎回楽しみであった.当時,一番関心があったのは,どうして生物がこれほどうまく機能するのか,ということだった.これに対する世のメジャーな回答は,こういう遺伝子があるから,あるいは,こういうタンパク質があるから,というものだったが,清水先生の講義では,生物は物理学的観点から見てどのようにして成り立ち得るのか,という視点で語っておられたという点が際立っていて興味深かった.その中で,疎水的相互作用がキーワードのひとつであることを知り,何でも疎水的相互作用に結び付けて,わくわくしながら友人に語っていた頃が,昨日のことのように思える.
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