抄録
マラリアは,主に熱帯・亜熱帯地域を中心に流行する感染症である.世界保健機関(WHO)によると,2013年には患者数が約2億人にものぼり,死者はおよそ58万人に達したとされる.マラリア原虫は図に示すように,様々に形態を変えながらヒトの肝臓,赤血球(血液)および媒介蚊を巡る生活環を持つ.近年,マラリア治療薬の開発が進みつつあるが,薬剤に対する耐性も認められ,マラリアの危険性はいまだに高く,新たな作用機序を持つ新規治療薬の創出が強く望まれている.本稿では,Baragañaらが見いだした,マラリア原虫の複数のライフステージで作用する新規抗マラリア薬について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) World Health Organization, World Malaria Report2014 (2014).
2) Ariey F. et al., Nature, 505, 50-55 (2014).
3) Baragana, B. et al., Nature, 522, 315-320 (2015).