ファルマシア
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過飽和状態の本質的理解に基づく固体分散体のポリマー選定
別所 幸治
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2016 年 52 巻 10 号 p. 970

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抄録
分子レベルで化合物をポリマーに分散させた固体分散体は,経口吸収性を改善する有用なツールである.固体分散体が経口吸収性を改善する主な理由は,化合物が結晶の溶解度を超えて溶解(過飽和)し,ポリマーが過飽和状態を安定化するからである.これまで,過飽和状態を最も安定化するポリマーを選定するためのスクリーニング評価が盛んに行われてきた.
これらの評価の中で,化合物が過飽和した溶液中に化合物を含むコロイド粒子が存在することが明らかとなった.このコロイド粒子は結晶化する可能性があるため,コロイド粒子が過飽和状態の安定性にどう影響するかを評価する必要がある.しかし,発生メカニズムが不明であることが一因となり,コロイド粒子を考慮したスクリーニング評価は進展しなかった.これについて近年,液/液相分離(liquid liquid phase separation:LLPS)という熱力学的な理論で,コロイド粒子の発生メカニズムが説明可能となった.LLPSを理解し,理論に基づいた評価を実施することで,効率的に目的のポリマーを選定できる可能性がある.
そこで本稿では,ダナゾールの過飽和溶液においてLLPSにより生成する油滴(以下,LLPS油滴)の,熱力学的および速度論的な特性解明と,ポリマーがそれらの特性に及ぼす効果の解明について検討した論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Friesen D. T. et al., Mol. Pharm., 5, 1003-1019 (2008).
2) Ilevbare G. A. et al., Cryst.Growth, 13, 1497-1509 (2013).
3) Jackson M. J. et al., Pharm. Res., 33, 1276-1288 (2016).
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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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