ファルマシア
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メタロチオネインをリソソームに運ぶとTNF毒性が軽減される?
宮良 政嗣
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2016 年 52 巻 8 号 p. 798

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抄録
腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)は,悪性腫瘍に対して選択的に細胞死を誘導するサイトカインであると考えられていたが,近年では,正常細胞にも作用を示し,様々な病態に関与していることが明らかになってきた.一方,TNF毒性において,酸化ストレスおよびリソソーム内加水分解酵素の漏出が関与すると考えられているものの,その詳細なメカニズムは不明なままであった.現在までにAutelliらは,ラット肝がん由来細胞株HTC細胞を用いて,細胞内鉄キレートがTNF毒性を軽減することを,また同グループUllioらは,TNF毒性にリソソーム膜透過性亢進(lyso‐somal membrane permeabilization:LMP)が関与することを報告している.
本稿では,TNF 誘発酸化ストレスおよびLMP において,リソソーム内腔の鉄イオンが中心的な役割を果たしていることを明らかにし,金属結合タンパク質であるメタロチオネイン(metallothionein:MT)をリソソームに運ぶことで,その毒性を軽減できることを示したUllioらの論文を紹介したい.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Autelli R. et al., Apoptosis, 10, 777-786 (2005).
2) Ullio C. et al., J. Lipid Res., 53, 1134-1143 (2012).
3) Ullio C. et al., Autophagy, 11, 2184-2198 (2015).
4) Baird S. K. et al., Biochem. J., 394, 275-283 (2006).
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© 2016 The Pharmaceutical Society of Japan
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