ファルマシア
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52 巻, 8 号
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目次
  • 2016 年 52 巻 8 号 p. 730-731
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ミニ特集にあたって:最近の診療報酬改定において,薬剤師の技能を担保する各種団体や学会が認定する認定・専門薬剤師が診療報酬点数の算定要件として散見されるようになった.薬剤師免許を有するだけでなく,一定の技能や資質を有する薬剤師の業務が診療報酬として評価されてきたのである.一定の技能や資質を担保するために,薬剤師の教育と研修があり,それぞれの役割は異なる.すなわち教育はカリキュラムに沿って実施されるが,研修はあくまでも“自己研鑽”が基本であり,目標も異なる.本ミニ特集では,診療報酬にかかわる認定・専門薬剤師や資質について解説いただき,薬剤師教育として社会人大学院とレジデント制度を,生涯研修として各種団体(日本病院薬剤師会,日本薬剤師会,日本薬剤師研修センター)の取り組みを紹介した.将来の薬学教育の方向性について考える機会にもなれば幸いである.
    表紙の説明:夏山でみかける紫色のトリカブトはキンポウゲ科トリカブト属の総称で,日本に約30種自生している.由来は,花が烏帽子(鳥兜)あるいは鶏の鶏冠に似ているからである.猛毒を有するが,オクトリカブトの加工した塊根は附子や烏頭として真武湯,烏頭湯などの漢方薬に用いられる.俗に不美人のことを「ブス」と言うが,これはトリカブト中毒で神経障害が起きた無表情の顔を指すらしい.
グラビア
オピニオン
Editor's Eye
ミニ特集 話題
  • 主に病院薬剤師に関して
    荒木 博陽
    2016 年 52 巻 8 号 p. 739-741
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    診療報酬改定で薬剤師が研修を要する診療報酬点数として、栄養サポートチーム加算、がん患者指導管理料3,基準調剤加算1,在宅患者調剤加算、医療安全対策加算、基準調剤加算1、在宅患者調剤加算がある。研修を受けることで多くの薬学的知識を得ることができ、結果的に患者に適切な説明あるいは質問に答えることができることから研鑽を積む事は薬剤師にとっては重要である。また、医療チームにその領域に精通した薬剤師が配置されていなければ診療報酬上点数を付与されない項目や専門薬剤師あるいは認定薬剤師でなければならないという基準は示されていないものの、医師あるいは看護師とチームを組んで患者に対応するにはかなりの知識や経験が必要であり、おのずと認定・専門薬剤師レベルが求められる事もある。薬剤師が医療現場、それが病院であろうと、保険薬局であろうと患者に対して最善の薬学的ケアができるためには研修等を通した日々の研鑽が必要である。日本病院薬剤師会は、新たに生涯研修制度として日病薬病院薬学認定薬剤師制度を開始した。専門、認定を取得した薬剤師がいることで患者、医療従事者に高い評価を受けることにもなり、今後ますますの研鑽を期待する。
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
  • 井関 健
    2016 年 52 巻 8 号 p. 746-748
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    薬剤師を取り巻く環境が、大きなうねりを上げて変化している状況下で、6年制薬学教育の上に積み上げられる大学院教育は、従来の「基礎科学研究」だけではなく、臨床・医療現場における新規薬物療法の開発、医療安全、医療制度評価、医療経済学などを視野に入れた新しい薬学の分野でなければならない。したがって、そこで学ぶ大学院生は、医療現場で経験を積んだ人間、あるいは現職の薬剤師・その他の薬系医療技術者も対象となり、大学院教育もまた卒後教育の一つとして位置づけられる。
ミニ特集 話題
  • 橋田 亨
    2016 年 52 巻 8 号 p. 749-751
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    薬剤師の卒後研修制度としては,従来から大学病院を中心に実施されていた薬剤師研修生制度がある.中には,40年以上継続している実績を有した施設もあり,これまでに病院薬剤師の養成に重要な役割を果たしてきた.一方,薬剤師レジデント制度はその歴史も浅く,施設ごとに独自の運営がなされている.我が国で薬剤師レジデントを標ぼうしているプログラムは大きく2つに分類される.すなわち,薬剤師研修生制度と同様に学部卒業後あるいは大学院修了後の薬剤師の最初のキャリアとしての初期研修プログラムと,ある程度の薬剤師経験あるいは研究・教育歴を経た後に特定の分野におけるスペシャリストを目指す専門薬剤師プログラムに大別される.後者の具体例としては,がん専門薬剤師の養成を目的としたレジデント制度がある.筆者は,これまでに平成23,24年度日本病院薬剤師会学術委員会学術第6小委員会「卒後臨床研修としての病院薬剤師レジデント制度に関する調査・研究」および,平成25年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業「6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究:代表研究者 乾 賢一」の中で,分担研究者として「新たな卒後臨床研修制度の構築に関する研究」に取り組んだ.その成果をもとに,卒後臨床研修としての薬剤師レジデント制度の現状について紹介する.
ミニ特集 話題
  • 幸田 幸直
    2016 年 52 巻 8 号 p. 752-754
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    近年、病院・診療所等で医療業務に従事する薬剤師においては、チーム医療の中で主体的に薬物療法に関与し、医療安全に貢献できる実践力を備えた薬剤師が必要とされている。そのような薬剤師の養成には、従前の生涯研修では十分でないことから、日本病院薬剤師会は病院薬学領域に特化し、かつ研修内容の質を担保できる研修認定制度を構築することとし、「日病薬病院薬学認定薬剤師制度」を新たな生涯研修認定制度として2015(平成27)年4月に発足させた。
ミニ特集 話題
  • 宮﨑 長一郎
    2016 年 52 巻 8 号 p. 755-757
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    日本薬剤師会では「薬剤師に求められるプロフェッショナルスタンダード(PS)」383項目の到達目標を作成、公表した。PSを指針として活用しながら、国際薬剤師・薬学連合(FIP)が提唱する「継続的な専門能力開発:CPD(Continuing Professional Development)」に基づいて計画的に生涯学習を進めるため、生涯学習支援システムJPALSを2012年4月1日からスタートした。現在26,983名の登録がある。クリニカルラダーレベルは6段階あり、本年7月に実施される「生涯学習達成度確認試験」の合格者がレベル5から6に昇格し、これをもってクリニカルラダーは完結する。その他にe-ラーニングシステムでのコンテンツ配信、「チャレンジ国試」や「専門分野別学識試験」なども用意し、登録者の生涯学習継続を支援している。
ミニ特集 話題
話題
セミナー
最前線
話題
薬学教育維新
在宅医療推進における薬剤師のかかわり
製剤化のサイエンス
薬学実践英語
トピックス
  • 金井 美紗衣
    2016 年 52 巻 8 号 p. 792
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    ラクタムはアミノカルボン酸が分子内脱水縮合した形を有する化合物の総称であり,中員環および大員環ラクタムは天然物や抗生物質に多く見られる骨格である.しかしながら,中~大員環形成はエントロピー的に不利な反応であるため,一般に分子間反応が優先する.したがって,競合する分子間反応を抑えるために高希釈条件等が必要となる.本稿では,Rebek Jr.らによって報告された「深い空洞を有するお椀型分子」をテンプレートに用いた12,13員環ラクタム合成について紹介する. 彼らは,疎水性相互作用を利用した包接型超分子触媒としての機能を見いだし,非常にユニークな水中での脱水反応を達成している.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mosca S. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 14582-14585 (2015).
    2) Gavette J. V. et al., Org. Biomol. Chem., 12, 6561-6563 (2014).
  • 三田 裕介
    2016 年 52 巻 8 号 p. 793
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    タンパク質を細胞内に導入するためには,細胞膜を通過することが必要となる.これまでに膜透過性ペプチド等でタンパク質を修飾することで,タンパク質を細胞内に導入する様々な手法が報告されている.しかしながら,タンパク質の修飾による生理活性の低下など好ましくない影響が観察される場合もある.本稿では,Andersenらが報告した,細胞膜通過後に修飾化合物が自壊し,タンパク質をフリーの状態で細胞内に導入することが可能なボロン酸誘導体1について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Fu A. et al., Bioconjugate Chem., 25, 1602-1608 (2014).
    2) Ellis G. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 3631-3634 (2012).
    3) Andersen K. A. et al., ACS Chem. Biol., 11, 319-323 (2016).
    4) Jung M. E., Piizzi G., Chem. Rev., 105, 1735-1766 (2005).
  • 朴 炫宣
    2016 年 52 巻 8 号 p. 794
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    微生物を用いた化合物の生物変換反応は基質特異的もしくは位置選択的であり,効率よく迅速に目的物を合成することができる.これらの反応は,微生物が有する酵素の触媒反応であるため反応条件が温和で,重金属触媒や有機溶媒もほぼ使用しないことから環境への負担が少なく,グリーンサスティナブルケミストリーの観点からも期待される分野である.本稿では,Takedaらによるベルベリン資化菌を用いたプロトベルベリン類のアナログ体の生産について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Takeda H. et al., J. Nat. Prod., 78, 2880-2886 (2015).
    2) Ma J. Y. et al., J. Pharm. Sci., 102, 4181-4192 (2013).
    3) 大久保達貴ほか, 日本薬学会, 日本薬学会第136年会, 横浜, 2016年3月.
  • 神谷 誠太郎
    2016 年 52 巻 8 号 p. 795
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    リウマチ疾患は炎症から引き起こされる疼痛疾患であり,その治療薬は主に疼痛軽減を目的として経口剤が使用される.しかしながら,バイオアベイラビリティが低く,患部へ薬物を送達する標的化などもなされていないため,症状の改善効果には個人差が生じることが知られている.そこで,患部に直接注射する関節内注射が有用であると考えられるが,薬物が関節部から急速に消失するため,繰り返し投与が必要となる.この繰り返し投与は感染症を生じる危険性もあるため,できるだけ関節部位に長時間薬物を維持する投与デバイスが必要不可欠であり,生体内分解性の高分子を用いた徐放性粒子はその改善が期待される製剤の1つである.しかしながら,どの位の粒子径の粒子が炎症部位において長い滞留性を示すかは明らかとなっていない.
    今回,0.3, 3, 10μmと3種類の粒子径の異なる粒子を,健常マウスおよび炎症を惹起させたマウスに関節内投与して,薬物の関節内滞留性およびその他の臓器への体内移行性の詳細を初めて検討したPradalらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Pradal J E. et al., Int. J. Pharm., 498, 119-129 (2016).
    2) Brackertz D. et al., Arthritis Rheum., 20, 841-850 (1977).
  • 岸 貴之
    2016 年 52 巻 8 号 p. 796
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    脂質の代謝異常は,メタボリックシンドロームや冠動脈疾患(CAD)などの心代謝系疾患と関連することが知られている.これらの疾患にはスタチン系などの治療薬が適応され治療効果を上げているが,いまだ死亡原因の上位であり新たな治療標的の開発が求められている.最近,ヒトゲノムの一塩基多型(SNPs)解析が進み,疾患に関与するSNPsが多数同定されている.ゲノムワイド関連解析(GWAS)はゲノム上に多数存在するSNPsを指標に,その近傍に存在する疾患関連遺伝子を網羅的に探索する手法である.これまでGWASにより疾患との関連が報告された遺伝子は多くがタンパク質をコードしており,タンパク質に翻訳されずRNAのままで機能するnon-coding RNAについての報告は少ない.特定のmRNAを分解・翻訳阻害することにより機能する microRNA(miRNA)はnon-coding RNAの一種である.一部のmiRNAは脂質や糖の代謝に関与することが示されていたものの,血中の脂質代謝や心代謝系疾患との関与はいまだ不明な部分が多い.今回,WagschalらはGWASデータから新たな脂質代謝関連miRNAを見いだし,生体内での機能を明らかにした.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Rottiers V. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 13, 239-250 (2012).
    2) Najafi-Shoushtari S. H. et al., Science, 328, 1566-1569 (2010).
    3) Wagschal A. et al., Nature Medicine, 21, 1290-1297 (2015).
  • 泉尾 直孝
    2016 年 52 巻 8 号 p. 797
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は,再発緩解を繰り返しながら慢性的に進行していく神経変性疾患であり,また自己免疫疾患としての側面を持つ.すなわち,中枢神経系の神経軸索の髄鞘成分に対する自己反応性免疫細胞の出現と,髄鞘の脱落に伴う神経症状を特徴とする.薬物誘導モデルなどの動物モデルを用いてMSの病態形成のメカニズムは解析されてきたが,いまだ自己免疫反応性と脱髄症状の因果関係は明らかではない.Trakaらは,髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイトを特異的かつ後天的に脱落するマウスを作製解析したところ,オリゴデンドロサイトの脱落が自己免疫応答を誘導することが明らかとなった.本稿では,このマウスの解析よって得られたMSの病態形成機序に関する知見について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Traka M. et al., Brain, 133, 3017-3029 (2010).
    2) Traka M. et al., Nat. Neurosci., 19, 65-74 (2016).
  • 宮良 政嗣
    2016 年 52 巻 8 号 p. 798
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)は,悪性腫瘍に対して選択的に細胞死を誘導するサイトカインであると考えられていたが,近年では,正常細胞にも作用を示し,様々な病態に関与していることが明らかになってきた.一方,TNF毒性において,酸化ストレスおよびリソソーム内加水分解酵素の漏出が関与すると考えられているものの,その詳細なメカニズムは不明なままであった.現在までにAutelliらは,ラット肝がん由来細胞株HTC細胞を用いて,細胞内鉄キレートがTNF毒性を軽減することを,また同グループUllioらは,TNF毒性にリソソーム膜透過性亢進(lyso‐somal membrane permeabilization:LMP)が関与することを報告している.
    本稿では,TNF 誘発酸化ストレスおよびLMP において,リソソーム内腔の鉄イオンが中心的な役割を果たしていることを明らかにし,金属結合タンパク質であるメタロチオネイン(metallothionein:MT)をリソソームに運ぶことで,その毒性を軽減できることを示したUllioらの論文を紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Autelli R. et al., Apoptosis, 10, 777-786 (2005).
    2) Ullio C. et al., J. Lipid Res., 53, 1134-1143 (2012).
    3) Ullio C. et al., Autophagy, 11, 2184-2198 (2015).
    4) Baird S. K. et al., Biochem. J., 394, 275-283 (2006).
  • 島田 謙
    2016 年 52 巻 8 号 p. 799
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    核酸医薬とはDNAやRNAを構成する塩基を組み合わせて合成した医薬品であり,疾患の原因となっている特定の遺伝子発現を制御することで治療効果を発揮する.低分子医薬,抗体医薬とは異なる作用機序を有することから次世代の医薬として,これまで治療が困難であるとされてきた疾患への応用が期待されている.しかし,核酸医薬の剤形は現在のところ注射剤のみであるため,長期間の薬物投与が必要となる慢性疾患への適応の難しさが懸念されている.この課題を解決するために,侵襲の少ない注射剤以外の剤形開発が必要であると考えられる.本稿では,坐剤あるいは注腸剤として投与可能な核酸医薬の開発に成功した研究成果について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dykxhoorn D. M. et al., Gene Ther., 13, 541-552 (2006).
    2) Bumcort D. et al., Nat. Chem. Biol., 2, 711-719 (2006).
    3) Murakami M. et al., Sci. Rep., 5, 17035 (2015).
    4) AgarwaLa A. et al., Curr. Atheroscler. Rep., 1, 467 (2015).
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