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温度応答性有機・無機ハイブリッドポリマーナノ粒子の開発
田中 健一郎
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2017 年 53 巻 10 号 p. 1019

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抄録
がん組織は正常組織よりも活動が活発であり,その周辺温度が高いことや,嫌気的解糖系の代謝物である乳酸や二酸化炭素の産生が亢進しているため,がん組織内のpH が低下していることが知られている.そのため,がん組織と正常組織の物理化学的性質の違いに着目し,抗がん剤やがんの位置を検出できるプローブの開発を目指した研究が盛んに行われている.
代表的な温度応答性ポリマーとして,Poly(N-isopropylacryl amide)(PNIPAAm)が知られており,バイオマテリアルやドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用が期待されている.PNIPAAmは温度に応答して,下限臨界溶解温度(lower critical solution temperature:LCST)である32℃を境に,低温側では親水性,高温側では疎水性となる性質(相転移)を持つ.これまでにHirutaらは,PNIPAAmを基本構造としてポリマーの共重合組成を変化させたり,pH応答性モノマーを共重合させたりすることで,温度やpHに応答する蛍光ポリマープローブを作製している.
一方,有機・無機ハイブリッドナノ粒子は,無機ナノ粒子表面へ有機物質が化学修飾されたもので,有機物質の優れた特性(柔軟性や加工性)と物理化学的に強固な無機材料を組み合わせるため,様々な分野への応用が期待されている.そこでHirutaらは,これまでの研究を基盤として,温度応答性有機・無機ハイブリッドポリマーナノ粒子を作製し,作製したナノ粒子を用いて,がん細胞への取り込みについて解析しているので,本稿で概説する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Hiruta Y. et al., ACS Macro Lett., 3, 281-285(2014).
2) Hiruta Y. et al., Sens. Actuators B Chem., 207, 724-731(2015).
3) Hiruta Y. et al., Colloids Surf. B Biointerfaces., 153, 2-9(2017).
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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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