ファルマシア
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薬剤師の服薬指導が慢性骨髄性白血病の治療効果を上げる
大神 正宏
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2017 年 53 巻 10 号 p. 1023

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抄録
慢性骨髄性白血病は9番染色体と22番染色体の相互転座により形成されるフィラデルフィア(Ph)染色体を特徴とする.Ph染色体上のBCR-ABL1融合遺伝子にコードされて産生されるBCR-ABLチロシンキナーゼにより細胞内基質や自己がリン酸化され,細胞内シグナル伝達が活性化することにより,白血病細胞が増殖する.これまで慢性骨髄性白血病の治療はインターフェロンや造血幹細胞移植が中心であり,5年生存率は約50%であったが,イマチニブの登場により90%以上となり,治療成績は飛躍的に向上した.イマチニブは経口分子標的治療薬であり,BCR-ABLチロシンキナーゼのATP結合部位に競合的に結合し,基質のリン酸化を阻害することで細胞増殖を抑制する.
イマチニブのような経口薬による治療は外来での治療を可能とし,患者のQOLの向上が期待できる.しかしながら,経口薬による治療においては,患者が治療方針を十分に理解し,積極的に治療を受けようとする服薬アドヒアランスが重要である.慢性骨髄性白血病におけるイマチニブによる治療において,服薬アドヒアランスが90%より高い患者では分子遺伝学的寛解の達成率は93.7%であるが,90%以下の患者では13.9%まで低下するという報告がある.そのため,イマチニブによる治療効果の向上には服薬アドヒアランスの向上が必要である.がん治療における経口薬の服薬アドヒアランスは16〜100%と報告されており,服薬アドヒアランスの向上には医療従事者の介入が必要である.今回,薬剤師の服薬指導により慢性骨髄性白血病患者の服薬アドヒアランスが向上し,治療効果の向上につながった論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Marin D. et al., J. Clin. Oncol., 28, 2381-2388(2010).
2) Ruddy K. et al., CA Cancer J. Clin., 59, 56-66(2009).
3) Moulin S. M. et al., Support. Care Cancer., 25, 951-955(2017).
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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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