ファルマシア
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環境・衛生遺伝子間ネットワークを明らかにするゲノムワイドエピスタシス解析
野本 竜平
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2017 年 53 巻 10 号 p. 1022

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抄録
ある疾患や形質といった表現型と関連があると考えられる遺伝的変異を統計学的に同定するゲノムワイド関連解析(genome-wide association studies:GWAS)は,ヒトを中心とした真核生物の分野で10年以上前から広く利用され,今日までに多数の研究成果が発表されている.細菌はゲノムがダイナミックに変化する性質のためGWASが困難で,長らく未開拓の領域であったが,ここ数年の間に病原性に関与する遺伝的変異の同定をGWASにより実施した報告が複数発表されてきている.これらの解析では,宿主特異性,薬剤耐性や病原性などに関与する様々な遺伝因子が同定されている.ある遺伝的変異(多型)が別の遺伝子座の表現型にも影響する相互作用をエピスタシスと呼び,細菌のゲノムでは環境に適応するためエピスタシスを介して複数の遺伝子を同調的に変異させる,言わばゲノム内共進化のような現象が起こる.近年の細菌集団ゲノムデータセットの規模と多様性の進歩により,ゲノムワイドな共進化のパターンが個々の塩基レベルの解像度で解明される可能性も見えてきた.本稿では,細菌のゲノム配列アライメントから統計的に優位に共進化する多型部位を同定する新たな手法を開発したSkwarkらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) PowerR. A. et al., Nat. Rev. Genet., 18, 41-50(2017).
2) Skwark M. J. et al., PLoS Genet., 13, e1006508(2017).
3) Marks D. S. et al., Nat. Biotech., 30, 1072-1080(2012).
4) Chewapreecha C. et al., PLoS Genet., 10, e1004547(2014).
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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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