2017 年 53 巻 11 号 p. 1111
近年,系内での求核剤生成を伴うカルボニル化合物の触媒的エナンチオ選択的直接α-アミノ化反応が注目されている.その戦略の1つとして,ルイス酸とブレンステッド塩基の共触媒系を利用する方法があるが,酸-塩基反応による触媒の失活が重大な問題となる.一方,この問題を解決する1つの手立てとして,フラストレイテッド・ルイスペア(FLP)の利用,すなわち「お互いの立体障害のために失活しないルイス酸・ルイス塩基ペア」による反応系が開発されつつある(図1a).しかし,FLP触媒系を適用できる反応は少なく,エナンチオ選択的反応への適用例はほとんどない.本トピックスでは,光学活性FLP触媒系によるカルボニル化合物のエナンチオ選択的直接α-アミノ化の初めての報告例を取り上げる.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Stephan D. W., Erker G., Angew. Chem. Int. Ed., 54, 6400–6411(2015).
2) Shang M. et al., J. Am. Chem. Soc., 139, 95–98(2017).