ファルマシア
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プロペラ型分子でmRNAをロック!:大腸菌の熱応答を制御する
一ノ瀬 亘
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2017 年 53 巻 2 号 p. 171

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抄録
一本鎖RNAは様々な二次構造を形成でき,その構造特異性は遺伝子の発現制御に関わる.生物は温度上昇という外部ストレスを受けると,熱ショックタンパク質の合成が誘導される熱応答を示す.大腸菌の熱応答においては,熱応答因子σ32をコードする遺伝子rpoHのmRNAの二次構造が重要であることが報告されている.σ32mRNAの5'末端領域は低温時には三又路(3WJ)構造を含む安定なステム―ループ構造をとり,リボソームが接近できない.しかし加温条件下では解離し,リボソームによる翻訳が促進される(図1a).このような翻訳制御構造を標的とする合成リガンドは,その機構解析だけでなく,新規抗菌薬の開発に有用である.しかし,核酸鎖を標的とする小分子リガンド開発において,多数の核酸鎖の中から目的部位と選択的に結合する分子の設計は未だ困難である.最近Barrosらは,プロペラ型構造の合成小分子トリプチセン(図1b)がσ32mRNA中の3WJ構造に結合することを見いだし,大腸菌内でmRNAの熱応答を合成小分子で制御することに初めて成功したので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Morita M. et al., Genes Dev., 13, 655-665 (1999).
2) Barros S. A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 55, 8258-8261 (2016).
3) Barros S. A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 13746-13750 (2014).
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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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