抄録
特集:酸素生物学から考える医療
特集にあたって:分子状酸素はエネルギー産生の最重要基質である.一方で,酸素は充足したレベルにあっても一部は酵素的に活性酸素(reactive oxygen species:ROS)に変換され,生命体に酸化ストレスを与える.こうした旧来の理解から,低酸素・高酸素環境それぞれが生体にとってストレスとなり,病態・疾患発症の原因になると考えられてきた.しかし近年の研究から,生体内組織や細胞が積極的に低酸素環境を作り出すことで恒常性を維持していること,毒性の高いROSが感染防御や細胞増殖・分化にも寄与することが明らかにされ,酸素に対する生物学的理解は大きな転換期を迎えている.本特集号では,酸素生物学研究を推進される研究者に独自のユニークな技術・材料とそれを用いて得られた最先端の研究成果を紹介していただいた.本特集が薬学研究・教育にも活かされれば幸いである.
表紙の説明:酸素は重要なエネルギー産生源であり,その不足は生存を脅かす.一方で,組織や細胞は積極的に低酸素環境を作り出すことで,その恒常性を維持している(上;森先生ご提供).本稿では,酸素生物学の最先端研究を推進される研究者がもつユニークな技術・材料を紹介していただいた.(下左)細胞内低酸素シグナル,(中)酸素イメージング指示薬,(右)癌化・老化耐性げっ歯類ハダカデバネズミ.