オレフィンメタセシスは,二種のオレフィンから結合の組み替えが起こり,新たなオレフィンが生成する反応である.一般的に可逆反応であるため,熱力学的に安定な異性体が優先して得られる.1, 2-二置換オレフィンの多くは
E体のほうが熱力学的に安定であるが,ハロゲン化アルケニル化合物の場合,
Z体のほうが熱力学的に安定である(図1-①).そのため,既存のメタセシス反応による
E-選択的な合成は困難であった.今回,Hoveydaらによって嵩高いアリールオキシ配位子を持つモリブデン錯体触媒を用いて,速度論的制御に基づいた
E-選択的なオレフィンメタセシス反応が報告されたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Hoveyda A. H., Zhugralin A. R.,
Nature,
450, 243-251(2007).
2) Wiberg K. B.
et al.,
J.
Chem.
Theory Comput.,
5, 1033-1037(2009).
3) Nguyen T. T.
et al.,
Science,
352, 569-575(2016).
抄録全体を表示