2017 年 53 巻 3 号 p. 206-209
私たちが暮らしている現代の地球上の大気は酸素を豊富に含んでいる。地球に好気性細菌が出現して以降、生物は酸素を利用して効率よく細胞内でエネルギーを産生して生命を維持するためにそれぞれ進化してきた。その一方で、哺乳類の造血幹細胞システムにおいては体内に生理的に存在する低酸素環境を利用して、造血幹細胞の発生や、骨髄における造血幹細胞の機能制御がなされることが明らかになってきている。本稿ではこれらの低酸素応答システムによる造血制御に関する研究の進展について概説する。