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ケタミンの抗うつ効果はNMDA受容体拮抗作用によって生じるか?
中嶋 智史
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2017 年 53 巻 3 号 p. 265

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抄録

ケタミンは解離性麻酔薬として用いられている.近年,Bermanらは大うつ病患者らに麻酔に用いられる投与量よりも低用量を投与することにより,うつ症状が改善することを発見した.その後の研究により,単回投与後1時間以内に抗うつ効果が認められ,かつ1週間以上持続すること, 治療抵抗性のうつ病患者における希死念慮を速やかに低減させることが報告されており,有効な新規抗うつ薬として期待されている.ケタミンはグルタミン酸作動性のNMDA受容体拮抗薬であり,NMDA受容体拮抗作用によって抗うつ効果が生じていると考えられてきた.一方で,他のNMDA受容体拮抗薬では抗うつ効果が見られないことも報告されており,そのメカニズムは未だ明らかでない.本稿では,ケタミンの抗うつ効果がNMDA受容体の拮抗作用とは独立に生じている可能性について検証したZanosらの研究について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Berman R. M. et al., Biol. Psychiatry, 47, 351-354(2000).
2) Zarate C. A. et al., Arch. Gen. Psychiatry, 63, 856-864(2006).
3) Price R. B. et al., Biol. Psychiatry, 66, 522-526(2009).
4) Zanos P. et al., Nature, 533, 481-486(2016).
5) Ebert B. et al., Eur. J. Pharmacol., 333, 99-104(1997).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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