抄録
友人に静岡県三島市を案内してもらった.その際,夫婦で営む気品漂う割烹で,海鮮料理をご馳走になった.艶のある新鮮な刺身,口の中で濃厚なクリームがとろけていく焼き白子など,地元で獲れる海の幸すべてが絶品であった.お通しに出された「いいっこ」と呼ばれている貝は,海藻の衣を纏ったお茶目な巻貝の姿が愛らしく,爪楊枝で身を取り出して口に運ぶと,ほのかに磯の香りがした.コリコリとした食感とともに上品な甘味が広がり,絶妙な美味しさであった.ふと,この味をどこかで口にしたような気がした.何処で…そうだ,これは,以前に北海道の地球岬辺りで食べたものではないだろうか.同時に,岬から見た風景が浮かんだ.海が一面に広がり,海と空の濃淡の青さが続く素晴らしさに感動し,地平線が丸く見えた時の衝撃が蘇った.加えて,地球岬で想い人と語り合ったことや家族で室蘭八景を巡った思い出が呼び起こされ,懐かしい温もりで胸が満たされた.