通常,分子軌道の電子励起では,1つのエネルギー状態の変化は1個の光子吸収によって起こる.この時,光子のエネルギーと励起分子の電子遷移エネルギー(バンドギャップ)はよく対応する.これに対して,2個の光子をほぼ同時に分子が吸収することで,同様の遷移が起こる時,これを二光子励起という.光子1つ当たりのエネルギーは,通常の遷移に比べて約半分でよいので,振動数が半分,すなわち2倍の波長を持つ長波長の光によって遷移が起こる.ただし,2個の光子をほぼ同時に吸収する必要があるため,パルスレーザー光の集光など光子密度が非常に高くなる場合しか起こらない.二光子励起現象は二光子蛍光顕微鏡に応用されている.