抄録
不活性C–H結合の官能基化は,21世紀以降一挙に花開いた分野である.適切な遷移金属触媒と共酸化剤を組み合わせることでC(sp2)–HおよびC(sp3)–H結合の官能基化が実現される.一方,共酸化剤の代わりに陽極酸化を利用するC–H結合官能基化反応は,原子効率が高く環境に優しい変換反応といえる.しかし,これまでの報告では,比較的活性化が容易なC(sp2)–Hやアリル位C–H結合の官能基化に留まっていた.今回,オキシムを配向基として陽極酸化とPd触媒を組み合わせたC(sp3)–H結合の酸素官能基化反応が達成されたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Jiao K. -J. et al., Tetrahedron Lett., 58, 797–802(2017).
2) Yang Q. -L. et al., J. Am. Chem. Soc., 139, 3293–3298(2017).
3) Stowers K. J. et al., Chem. Sci., 3, 3192–3195(2012).