抄録
タンパク質,抗体などのバイオ医薬品は,がんや遺伝性疾患などの難治性疾患に対し,優れた薬効を示し,現在,世界における医薬品売上上位品目の大半を占めている.これらバイオ医薬品は,微量で高活性を示すものの,物理化学的不安定性,免疫原性などの問題点を有する.この問題点を改善するために汎用される技術の1つがポリエチレングリコール(PEG)化であり,PEG化製剤は,上記問題に対して著しい製剤特性の改善をみせる.しかし,タンパク質への直接的なPEG化は,薬理活性を低下させてしまうことが難点であり,PEG化製剤の多くは本来の活性が90%以上低下している.
本稿では,このバイオ医薬品のPEG化における課題に,革新的な超分子技術を用いてアプローチしたWebberらの論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Webber M. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 113, 14189-14194(2016).
2) Hirotsu T. et al., Mol. Pharm., 14, 368-376(2017).