ファルマシア
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ヒト疾患モデル動物の開発には腸内細菌を考慮する必要がある
森川 ありさ
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キーワード: 腸内細菌, 生体防御, 感染, 炎症
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2018 年 54 巻 5 号 p. 460

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抄録

研究用マウスは,低コスト,遺伝子操作の容易さ,多様な系統などの利点を持つことから,多くの研究分野で生物学的現象を理解するために利用されている.しかしながら,ヒト疾患解析や創薬研究では臨床経過を完全には反映しない.これは,マウスとヒトのゲノムレベルの違いに依存するだけの現象であろうか.近年は,同じマウスであっても遺伝的背景以外に腸内細菌叢や餌食を含めた生活環境条件の違いによって,免疫などの生体応答が異なることが示されている.特に研究用マウスは,自然環境と異なる清潔な環境(specific pathogen free)で生活している.そのため,野生マウスはヒト成人に類似しているのに対し,研究用マウスはヒトの成人ではなく新生児に類似した免疫細胞集団を持つ.最近,特に腸内細菌叢は宿主の免疫応答をはじめ,生体恒常性維持に重要であることが明らかになってきている.
本稿では,野生マウスの腸内細菌叢によって宿主の免疫状態が変化し,感染症や腫瘍形成時における炎症が制御されることを報告したRosshartらの成果を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Harrison C. A. et al., Nat. Rev. Immunol., in press(2017).
2) Beura L. K. et al., Nature, 532, 512-516(2016).
3) Rooks M. G. et al., Nat. Rev. Immunol., 16, 341-352(2016).
4) Rosshart S. P. et al., Cell, 171, 1015-1028(2017).

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© 2018 The Pharmaceutical Society of Japan
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