ファルマシア
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不可逆的阻害剤によって抗酸化酵素を酸化酵素へ変換し,がんを叩く!
藤川 雄太
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2019 年 55 巻 1 号 p. 66

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抄録

細胞内の酸化還元(レドックス)環境は活性酸素種(reactive oxygen species: ROS)の発生とそれに拮抗する様々な抗酸化分子(チオレドキシンなど)による抗酸化能のバランスによって成り立っている.一般的にがん細胞は正常細胞に比べ酸化ストレスに脆弱であることが知られているが,がん細胞内はROSレベルが高い一方で,抗酸化作用も亢進していることで生存が維持されている.がん遺伝子によらないこのような性質は,新しい抗がん剤の創製に有用な創薬標的として期待されている.本稿では,チオレドキシン還元酵素1(TXNRD1)選択的不可逆阻害剤が,抗がん細胞活性を示すというStaffordらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Luo J. et al., Cell, 136, 823-837(2009).
2) Stafford W. C. et al., Sci. Transl. Med., 10, eaaf7444(2018).
3) Anestål K. et al., PLoS One, 3, e1846(2008).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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