2019 年 55 巻 5 号 p. 442
Nodulisporic acid類は抗寄生虫作用を示すインドロテルペノイドである.造的特徴として,C3,C4位の第四級不斉炭素中心にトランス配座でメチル基を有する複雑な構造が挙げられ,その構築は極めて困難である.これまでの合成では,容易に調製可能なデカリンが原料に用いられていたが,上述のメチル基の導入に多段階を要していた.一方,2015年にProninらは,ラジカル−極性交差反応を用いたカスケード型環化により,インドロテルペノイド類の置換様式と一致するトランスデカリン骨格の一挙構築法を見いだした.今回,彼らはこの反応を鍵反応とし,わずか12工程でnodulisporic acid C(1)の収束的全合成を達成したので,本稿にて紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Ondeyka J. G. et al., J. Nat. Prod., 66, 121-124(2003).
2) George D. T. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 15410-15413(2015).
3) Godfrey N. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 140, 12770-12774(2018).
4) Bruno N. C. et al., J. Org. Chem., 79, 4161-4166(2014).