抄録
ホスホジエステラーゼ4D(PDE4D)は,細胞内セカンドメッセンジャーである環状ヌクレオチドcAMPを分解する酵素である.一方,PDE4D阻害剤は神経細胞内のシグナル伝達系を制御することで,記憶改善およびアルツハイマー病進行遅延の両作用を有するとされる.しかしながら,既存のPDE4阻害剤であるroflumilastやapremilast(1)は,吐気等の副作用の発現が課題となっている.上記の既存薬はPDE4のサブタイプ選択性が低く,またPDE4酵素の活性化型と定常型に対し,同程度の阻害活性を有することが知られている.著者らは副作用の低下を志向したPDE4Dサブタイプ選択的阻害剤を創出し,PDE4D酵素の活性化型に対して高い阻害能を示す化合物を見いだしたので,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Gurney M. E. et al., J. Med. Chem., 62, 4884-4901(2019).
2) Naganuma K. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 19, 3174-3176(2009).
3) Gurney M. E. et al., Sci. Rep., 7, 14653(2017).