抄録
特集:かゆみ研究の最新知見と将来展望
特集にあたって:「痒み」は痛みと同様に警告系として備わっており,生体防御に重要な役割を担う.一方,様々な疾患に付随する病的な痒みは耐え難い苦痛であるため,適切な治療を施さなければならない.痒みと痛みは全く異なる感覚であるが,その調節機構には多くの共通点が存在する.近年,痒み研究は飛躍的な進展を遂げており,最新のエビデンスや研究の動向をもとに痒みのメカニズムを総合的に理解し,今後の基礎・臨床研究の方向性を改めて検討する時期に達している.本特集号では,基礎・臨床の視点から,様々な領域における痒みのメカニズムならびに薬物治療戦略について解説して頂いた.痒み研究における最新の知見を踏まえ,将来の展望についても考えていきたい.
表紙の説明:「痒み」は皮膚に分布する一次知覚神経終末で受容され,中枢神経へと伝達される.痒みは主に皮膚において生じる不快な感覚であるが,脊髄や脳においても非常に複雑な調節を受けていることが最近の研究から明らかになった.痒みを総合的に理解するためには,これらの領域それぞれにおける研究の進展が不可欠であり,更なるエビデンスの蓄積が望まれる.