2015 年 76 巻 2 号 p. 365-368
症例は72歳,女性.右季肋部痛と労作時息切れがあり,近医受診後当院紹介.直径14cmの巨大肝嚢胞と診断され,腹腔鏡下肝嚢胞天蓋切除術が施行された.直近の症例で超音波凝固切開装置による嚢胞切離後胆汁漏をきたした経験があったので,vessel sealing system系のエネルギーデバイスの一つであるLigaSure blunt tip 5mm(リガシュア)にて嚢胞壁を切開した.細径,十分な把持力,長い凝固切離ストロークが円滑な手術に寄与した.本症例と,超音波凝固切開装置を使用した自験胆汁漏症例の嚢胞切除縁を組織学的に比較したところ,脈管構造のシールは両者で確認できなかったが,リガシュアのシールは断端変性組織の密度が高く幅広いことが観察された.肝嚢胞壁の確実な凝固・切離にリガシュアは有用と思われた.