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細胞老化現象により分泌されるタンパク質は術後のリスクを反映する?
平野 良平
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キーワード: 細胞老化, SASP
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2021 年 57 巻 4 号 p. 323

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抄録

近年,急速に高齢化する社会では,生活習慣病やがん等の加齢性疾患の罹患率が増加しており,加齢性疾患のリスク因子として「細胞老化」が注目されている.細胞老化とは酸化ストレス等によってDNA損傷が起こった際に誘発される不可逆的細胞増殖停止現象である.長年の細胞老化の研究により,細胞老化を起こした細胞(老化細胞)は生体内に長く存在し,サイトカインやケモカインといった炎症や発がんを促す因子を分泌することが解明されており,この現象は細胞老化随伴分泌現象(senescence-associated secretory phenotype: SASP)と呼ばれている.さらに,細胞老化が加齢性疾患の死亡率やアルツハイマー型認知症の進行,術後の有害事象や医学的リスクに関与することも報告されている.そのため,生体内の細胞老化は,加齢性疾患をはじめとする多くの臨床上のバイオマーカーと成り得る.一方,生体内における細胞老化には,性別や生活習慣,疾患等の複数の因子が複雑に絡み合っていることから,その評価方法は確立されていない.ここでは,Schaferらが発表したSASPにて分泌されるタンパク質の血中濃度が術後の医学的リスクを反映した例を紹介したい.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Campisi J. et al., Nature, 571, 183-192(2019).
2) Schafer M. J. et al., JCI Insight, e133668(2020).
3) Kim S. W. et al., JAMA Surg, 149, 633-640(2020).
4) Yousefzadeh M. J. et al., EBioMedicine, 36, 18-28(2018).

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© 2021 The Pharmaceutical Society of Japan
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