2025 年 61 巻 6 号 p. 553_1
長井記念薬学研究奨励支援事業へ採用していただいたことは,筆者にとって研究者として生きる人生を選ぶための非常に重要なきっかけになった.支援があったからこそ博士課程へ進学する覚悟を決め,分子複合体の形成に関する研究テーマに専念できた.在学中には米国ミネソタ大学での研究留学も叶い,翌年からは日本学術振興会特別研究員にも採択される結果となった.大塚誠教授に師事しながら論文を書き続け,2021年には学位を取得し,その後は塩野義製薬の研究者となった.企業では自身の専門を活かして共結晶化合物の製品開発 (COVID-19経口治療薬) に従事し,製剤の処方設計から商用生産体制の構築まで,開発品の上市に携わることができた.入社早々,多忙な日々を過ごすことになったが,承認されたときの感動は忘れられない.研究活動を通じて積み上げてきたものが人々の健康を守ることにつながり,心から嬉しく,また大きな達成感を感じた.このような経験ができたのは,ひとえに周りの方々のお力添えと本事業に採用していただいたおかげである.筆者は2024年10月から大阪医科薬科大学の製剤設計学研究室 (戸塚裕一教授) の助教として着任した.今後はアカデミアにて教育に力を入れながら,世界で活躍する科学者として基礎および応用研究に寄与していきたい.将来,製薬・製剤技術の発展に貢献することで,皆様に恩返しができるよう,精進していく.