抄録
大津波で被災した仙台平野の海岸防災林再生現場では、事業初期段階に生育基盤として造成された盛土に部分的な水溜まりが発生している所がある。この状態はクロマツ苗に悪影響を与える。本論では、こうした盛土の状態を把握し、対策法としての盛土の耕起による物理矯正効果を評価した。水溜まりが生じる盛土は全般に堅密で、土壌構造は未発達だったが、地表部では滞水に由来するグライ層の形成が確認された。盛土の全孔隙率は低い傾向を示し、特に0 ~ 50 cm 深で低かった。全孔隙に対して粗孔隙が少ないものは特に透水係数が低く、締固めによる孔隙の縮小や減少が透水性不良の原因となったと推察された。海砂に比べて盛土はシルトや粘土の含有率が高く、粒度に幅が
あった。そのため、盛土は海砂に比べ締固まりやすいと考えられる。この盛土材料そのものの特性に加えて盛土造成時の重機走行による締固めが盛土に水溜まりが生じた原因と考えられた。仙台森林管理署では盛土への水溜まりの発生解消と硬盤層破砕を目的とし盛土の耕起を行っている。そこで耕起後の盛土に対し工法ごとに土壌硬度鉛直分布を測定した。その結果、スケルトン式バックホウ、リッパードーザ、プラウとサブソイラを用いた耕起工では、いずれも刃の到達深度まで十分な物理矯正効果が認められたため、耕起工は土壌物理性改善に効果的であることが分かった。また、事業着手初期に造成された未耕起盛土で認められるような長期にわたる水溜まりの発生も認められなかった。以上から、いずれの工法も耕起完了から1 ~ 20 ヶ月が経過していたが、物理矯正効果は時間が経過しても持続していたことが示された。