森林総合研究所研究報告
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最新号
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論文
  • 新山 馨, 柴田 銃江, 齋藤 智之, 直江 将司
    原稿種別: 論文
    2025 年24 巻4 号 p. 255-264
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
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    ササ類は数10年から120年という長い間隔で、開花と実生更新を繰り返す。しかしササ類の開花は、数100 haの広域一斉開花から数m2の小規模部分開花まで、種や地域、開花年により多様である。本研究は、1) スズタケの開花現象を記録し、2) 一斉開花と部分開花の結実率の違いを明らかにすること、3) スズタケ種子の休眠性と発芽の有無を確認することを目的とした。小川保護林では33年間 (1990年–2023年) に、スズタケの開花を6箇所で観察した。それらは2017年の面積が0.45 ha以上の小規模一斉開花3箇所と、1991年、2020年、2023年に開花した数m2から数10 m2の部分開花3箇所だった。小規模一斉開花では、稈と地下茎の芽から異なるサイズの花序が出現したが、稈の花序でのみ結実した。稈密度の高い一斉開花では7.9–10.2%の結実率だったが、一斉開花でも稈密度が低い群落では結実しなかった。部分開花ではすべての場所で成熟した種子(穎果)を確認できなかった。一斉開花では、1176 ± 945個/m2の種子が生産され、翌2018年に平均0.63本/m2、2020年に平均2.46本/m2の実生がみられた。これらの結果、スズタケは0.45 ha程度の小規模開花でも結実し、種子は休眠性を持ち、開花翌々年にも発芽する可能性が高いことがわかった。今後はスズタケ開花跡地でのスズタケと樹木実生や他のササ類との競合と生残が研究課題となる。

  • 松原 恵理, 森川 卓哉, 大塚 祐一郎, 野尻 昌信
    原稿種別: 論文
    2025 年24 巻4 号 p. 265-273
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
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    樹木の精油成分が幅広い機能性を持つことはよく知られており、人々の暮らしの中で様々な製品として広く活用されている。本研究では森林資源を原料とした新規アルコール飲料「木の酒」の風味特性について、人による官能評価を用いて明らかにすることを目的とした。スギやシラカンバ、ミズナラ、クロモジ、ヤマザクラを原料とした「木の酒」を試料として、官能評価手法の一種であるCheck-All-That-Apply (CATA) 法を用いて香りと味の特性を評価した。一般消費者を対象とした調査から、スギは「木香」と「苦味・刺激味」、シラカンバは「草様・青臭あるいは果実様香」と「甘味」、ミズナラは「樽熟成香」と「重厚な味」、クロモジは「花様香・果実様香」と「苦味・刺激味」の特徴が抽出され、香りと味の調和や総合評価からも樹種ごとの違いが明らかとなった。評価用語の最適化や化学分析データとの整合性等の課題は残っているが、「木の酒」が持つ独自の風味特性の解明において人の五感を用いた官能評価の適用可能性が推察された。森林資源の新たな魅力の発信に向けて更なるデータの蓄積を進めていきたい。

短報
  • 服部 友香子, 升屋 勇人, 服部 力, 髙橋 由紀子, 秋庭 満輝
    原稿種別: 短報
    2025 年24 巻4 号 p. 275-279
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
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    2025年4月15日、森林総合研究所第二樹木園においてソメイヨシノの倒木が発生した。倒伏した個体は農林さくら通りに沿って植栽されている13本のソメイヨシノのうちの1本であり、他の個体についても同様の倒伏リスクが懸念されたことから、残存する12本を対象に目視および機器を用いた腐朽診断を実施し、併せて倒伏個体の観察による倒木原因の究明を行った。診断の結果、12本中6本において外観観察および機器診断による異常所見が認められた。特に、腐朽空洞率が60 %以上と診断された2個体については、伐倒などの対策が早急に求められると判断された。また、倒伏個体に関しては、根系の著しい減少と強風による根返りが主な倒木の要因であると推察された。

  • 大谷 達也
    原稿種別: 短報
    2025 年24 巻4 号 p. 281-287
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
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    海岸林での9年間の毎木調査から、高潮被害前後におけるクロマツとクスノキの死亡率や相対成長率の変化を評価した。徳島県大里松原で2016年2月から2025年1月まで毎木調査を実施し、期間中の2019年10月に高潮の浸水被害を受けた。高潮後6ヶ月目での死亡率はクロマツよりクスノキのほうが高かった。高潮後2年間の浸水範囲内での死亡率は両種とも浸水範囲外より高く、5年後でも高い傾向がみられた。胸高直径の相対成長率は2年後では両種とも高潮前より低下し、5年後には若干の回復がみられたが高潮前よりは低かった。高潮被害の影響は少なくとも5年間は続き、成木でもクスノキはクロマツより海水浸漬に弱いことが示された。

研究資料
  • 設樂 拓人, 津山 幾太郎, 百原 新, 相原 隆貴, 山下 慎吾, 則行 雅臣, 染矢 貴, 松井 哲哉
    原稿種別: 研究資料
    2025 年24 巻4 号 p. 289-302
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
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    電子付録

    気候の変化に伴う植生の変化を把握するために、植物種の分布確率を推定する種分布モデル (Species Distribution Model) が利用されてきた。しかし、既存研究では特定地点における複数種の分布確率の時系列変化推定は行われてこなかった。本研究は、日本の森林植生の主要構成樹種45種の最終氷期最寒冷期、完新世中期、現在、将来における分布確率を広域推定し、任意の緯度経度座標における45種の分布確率を時系列で表示するシステム「種組成変化推定図」を考案した。本稿では、その一例として、日本百名山の各山頂付の種組成変化推定図を作成した。このシステムは気候変化に伴う植生変化のパターンを理解し、予測するための基盤情報として有効活用できると考える。

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