抄録
大規模攪乱後の森林の再生過程を理解することは、気候変動による将来の攪乱規模の増大に対する森林の状態変化の予測に貢献する。本研究では、台風による大規模攪乱を受けた亜高山帯縞枯れ林におけるバイオマスの動態を推定することを目的として調査を行った。1959年に伊勢湾台風によって大きな被害を受けた北八ヶ岳縞枯山において、森林の発達段階が異なる3林分(若齢林、中間、成熟林、それぞれ19、36、59 年)に調査区を設置した。各調査区において、2001年から2008年に繰り返し測定された毎木調査データと、サンプル木のデータにより、バイオマスが推定された。さらに、年輪解析により成長パターンを検討した。推定されたバイオマスは、若木林区で最も低かったが、中間区と成熟林区の両方で同様のレベルに達した。中間区では、風倒後に成長を開始した実生の成長が早く、前生稚樹に由来する成熟林区と同様のバイオマスになったと考えられた。大規模な攪乱がなかったと考えられる他の縞枯れ林と比較すると、特に成熟林においてバイオマスが減少していた。本調査地においては、攪乱に起因する林分構造や成熟林衰退の若齢化・サイズ減少によって台風攪乱後のバイオマスの回復は遅れているものと考えられた。