抄録
森林総合研究所は林野庁の各森林管理局と共同で、全国の国有林に現在およそ180か所の収穫試験地を設定し、定期的な林分調査を行っている。このうち本報では、平成23~27年度に調査を実施したスギ・ヒノキ・カラマツ・トドマツの人工林収穫試験地等39試験地、76試験区およびアカマツ天然林収穫試験地1試験地、3試験区の調査結果を、過去の林分成長データとともに報告した。各試験地では比較的精密な毎木調査が実施されてきた。例えば、原則として、立木に識別番号を付して間伐、被害、枯死などの消長を記録した。また、胸高直径についてはペンキで印づけして固定した胸高位置で全数を測定した。樹高については測高器を用いて、原則として、全数を測定した。多くの試験区では、寺崎式B種間伐に相当する中庸度の下層間伐が施されている。ただし、一部の試験区では、間伐を全く実施していない場合や植栽本数・間伐強度を通常より多く (もしくは少なく) 設定した場合がある。これらの試験地から得られた時系列データは収穫表の検証や調製のほか、人工林の長期成長特性や間伐効果の解明、成長モデルのパラメータ調製などに応用されており、有益な研究基盤といえる。今後、適切に継続調査を実施することで、さらにデータの価値を高めることができると考えられる。