抄録
日本国内における生産年齢人口の減少のもと、多くの産業で外国人労働力の受入れが進められている。しかし、実績は多くないものの林業でも外国人労働力を受入れしようとする動きが近年は見られるようになってきた。本研究はそういった動きに着目して、外国人労働力の受入れに関わる制度を整理し、愛媛県が実施しているモデル事業の成果と課題について考察した。制度面に関して、技能実習生の受入れのためには技能検定制度の整備が不可欠であること、それを目的として林業技能向上センターが2019年に設立されたこと、ただし目標実現までには5年程度の時間を要することが明らかになった。課題として、その間の組織の拡充と情報発信の強化が必須であると考えられる。愛媛県の事例からは、技能実習生は技能修得と並んで日本文化の体験や得られる賃金に多く期待していること、受入れ企業は技術指導面での負担が大きくないと感じる一方、経済面での負担が少なくないことが明らかになった。また、モデル事業における受入れ期間は1年間であるため、海外への技能移転に関しては成果が限定的な状況といえる。