2026 年 25 巻 2 号 p. 61-75
気候変動適応について樹木の成長と生存を考える上で樹木水力学の重要性が増している。これまでも樹幹のサイズ変動測定が樹木の水分状態変動を把握するために利用されてきた。本研究では、直径の大きい針葉樹成木を材料として、改良したデンドロメータシステムにより、樹皮水分貯留変化を示すTWD (tree water deficit) と辺材圧ポテンシャル変化を示すdPP (differential pressure potential of sapwood) を数ヶ月以上の長期間にわたり同時計測することができた。このシステムの最大計測期間は1成長期程度とするのが適切であると考えられた。気象条件変化に対するTWDとdPPの変化は1日のうちでも季節によっても異なっており、dPPの日内変動は大気の飽差や樹液流の変化とよく適合していたが、TWDはdPPに対して遅れて変化した。気象条件の変化に対する樹木の反応は樹木個体間や樹種間で異なっており、雑種カラマツではTWDとdPPの変動が大きいが、スギではTWDの変動が大きくdPPは安定しており、トドマツでは両方の変化が小さかった。TWDとdPPの日内変動から辺材と樹皮の間での放射方向移動を含む樹幹内水移動の複雑性を解釈することができた。以上の結果はTWDとdPPの同時長期計測が樹木水力学研究に有用であることを示している。