Functional Food Research
Online ISSN : 2434-3048
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健康寿命延伸におけるグルコサミンおよびファンクショナルフードの臨床的意義
−公民連携での健康づくり推進と健康寿命延伸産業創生
蒲原 聖可
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2019 年 15 巻 p. 11-21

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抄録
 現在,健康寿命の延伸が国策として掲げられている.日本人が,要介護となる原因は,第1位が認知症,第2位が脳血管疾患(脳卒中),第3位が高齢による衰弱であることから,健康寿命延伸には,これらの疾患や病態についての対策が急務である.
 具体的には,まず,ライフステージに応じた適切な食事と運動習慣,適正体重の維持,禁煙が推奨される.これらに加えて,現時点でのエビデンス(科学的根拠)を俯瞰するとき,機能性食品素材を含むサプリメント・健康食品の適正利用が,健康寿命の延伸に貢献できると考えられる.
 認知症や脳卒中に共通する確立された危険因子として,高ホモシステイン血症が知られている.高ホモシステイン血症は,ビタミンBの1種である葉酸の投与により改善が可能である.実際,米国やカナダは,1998年に,穀類への葉酸の強制添加策を開始し,その翌年から脳卒中の死亡率が減少した.また,米国では,2000年に比べて,2012年の時点で,認知症の有病率が24%も減少したと報告された.
 高齢による虚弱に対しては,フレイルやサルコペニア対策が重要である.また,高齢者が要支援になる主な原因は,関節疾患であることから,機能性食品素材としてのグルコサミンも注目される.2015年以降に発表された,MOVES研究やLEGS研究といった臨床試験では,変形性膝関節症に対するグルコサミンの有用性が改めて示されている.また,PROOF研究では,グルコサミンによる膝OAに対する予防効果が示された.
 健康寿命の延伸が国の目標として掲げられる今日,一歩進んだ,より確実な健康増進のための取り組みも求められる.
 そこで,ヘルスケア企業と地方自治体との公民連携による新しい取り組みとして,健康寿命延伸のためのサプリメントの適正使用に関する啓発,および問題解決型の事業としてのサプリメントの利活用も行われるようになった.
 今後,機能性食品素材・ファンクショナルフードの利活用は,健康長寿社会の実現に向けた重要な施策の一つと考えられる.
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© 2019 ファンクショナルフード学会
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