Functional Food Research
Online ISSN : 2434-3048
Print ISSN : 2432-3357
原著
皮膚細胞へのアラビノガラクタン-プロテイン添加による影響
那須 さくら笹木 友美子原 真佐夫渡部 睦人野村 義宏
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2023 年 19 巻 p. 56-64

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抄録

植物に含まれるアラビノガラクタン-プロテイン(AGP)は,植物プロテオグリカンであり,コアタンパク質にヒドロキシプロリン(Hyp)をもち,そこにガラクトースおよびアラビノースからなるアラビノガラクタン(AG)の分岐鎖が結合した構造をとる.AGP は,植物の分化や成長に関わる生理機能を有することが知られており,これまでイオン交換クロマトグラフィーなどを用いて植物から分離されていた(イオン交換クロマトグラフィーで分画したAGP をPG と表記する).しかし,従来の方法ではAGP とAG を完全に分離することが困難であった.本研究では,疎水クロマトグラフィーによってアラビアガムからAG を除いたAGP を分画し(疎水クロマトグラフィーで分画したAGP をPGn と表記する),皮膚細胞に対する影響について検討を行った. 飽和食塩水に溶解したアラビアガムを疎水性担体に吸着させ,NaCl 濃度を段階的に低くした溶液で溶出することでAGP 分画物を得た.イオン交換クロマトグラフィーに比べ,疎水クロマトグラフィーはより効率的にAGP を抽出できる可能性が示唆された. 次に,ヒト表皮角化細胞(HaCaT)とヒト真皮線維芽細胞(HFB)へPGn およびPG を添加し,遺伝子発現量およびヒアルロン酸(HA)産生量への影響について検討した.表皮細胞では,HA 合成酵素の遺伝子(ʜAS2)の発現増加およびHA の産生量が増加することを確認した. よって,AGP を高含有する検体は皮膚のHA 量を増加させて皮膚水分量を改善する可能性が示唆さ れた.

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© 2023 ファンクショナルフード学会
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