2023 年 19 巻 論文ID: ffr23-0113
【目的】MNU(N-Methyl-N-nitrosourea)誘発ラット白内障モデルの発症機序に酸化ストレスが関与していることを明らかにし,抗酸化作用を持つ酒粕由来プロファイン®(PF)の病態抑制効果について検証した.
【方法】実験①3 週齢雌SD ラットにMNU 75 mg/kg を単回腹腔内投与し,経時的に7 日後まで水晶体の病変を組織学的に観察した.同時に水晶体上皮細胞での酸化ストレスマーカー(8-OHdG,TG)および,DNA 損傷マーカー(γH2A.X)の発現を観察し,d-ROMs(reactive oxygen metabolites)テストを用いて血清酸化ストレス度を測定した.実験②2 週齢雌SD ラットにMNU 50 mg/kg を単回腹腔内投与し,3 週齢から基礎食(CMF 食),または2%,4%および8%PF 食を摂食させた.4 週後に白内障の程度を,肉眼的および組織学的に観察した.
【結果】実験①MNU 投与48 時間後から水晶体上皮細胞の単細胞壊死,7 日後に水晶体上皮細胞の消失 と水晶体線維の膨化を認めた.MNU 投与48 時間後から水晶体上皮細胞の核の一部で酸化ストレスマーカーの8-OHdG あるいはTG 陽性シグナルが観察された.血清d-ROM 値は7 日後に高値を示した.実験②白内障の肉眼的発生率がPF 濃度依存的に減少した(MNU 単独群83%,2%PF 併用群40%,4%併用群17%,8% 併用群0%).組織学的白内障指数も濃度依存的に低下傾向がみられた.
【考察】MNU 誘発白内障の進行に水晶体上皮細胞での酸化ストレスの発現が関与していた.また,PF 投与による病態抑制効果が認められた.その抑制効果はPF の優れた抗酸化作用が関連するかもしれない.